情報誌CEL
アレックス・カー
池永 寛明
2016年11月01日
【対談】 外からの視点に日本人が今学ぶべきこと
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2016年11月01日
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アレックス・カー 池永 寛明 |
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地域活性化
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情報誌CEL
(Vol.114) |
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訪日観光客の急増が叫ばれる現在よりもずっと以前から、実に多くの外国人が日本を訪れており、彼らに触発され、その文化を取り入れることで、日本文化もまた発展をしてきた。日本に40年以上在住し日本文化を研究しながら古民家再生に尽力するアレックス・カー氏は、母国アメリカだけでなくヨーロッパやアジア諸国のまちづくりや文化にも造詣が深い。カー氏ならではの幅広い外の視点から我々日本人が「今学ぶべきこと」について考える。
美しき良き日本 ―― 幼き日に見た「家」への想い
池永:
アレックス・カーさんは徳島・祖谷での古民家再生プロジェクトをはじめ、景観保存活動や講演、あるいは文化的なイベントのプロデュースなど幅広く活躍されています。『美しき日本の残像』『犬と鬼』などのご著書には、幅広い日本の文化的な知識や社会背景、それに根ざした深い提言などが書かれていて、改めて私たち日本人が気づかされた点が少なくないように思います。
現在、日本に興味をもってくださる外国の方々は多いのですが、「クールジャパン」のようなある種限られたイメージで捉えている方もいれば、もう少し本質的なところまで理解しようとする方もいて、二極化の現象がみられるような気がしています。今日は、カーさんご自身の体験を通して感じられている、過去・現在・未来の日本のあり方などについてご意見やご提案などを伺います。
まず、最初に古民家再生をされた徳島・祖谷に至るまでの道のりを伺えますでしょうか。
カー:
私は1964年、ちょうど東京オリンピックの年に、父親の仕事の都合で来日しました。12歳のときですが、横浜にあったアメリカ海軍の基地に住むようになります。そのとき大変印象に残ったのが「家」だったのです。日本の夫人たちとの交友会のようなものに母が参加しており、毎月誰かの家を訪れるのですが、一緒に連れて行ってもらっていました。当時、三浦半島の三崎には、ある外国人がつくった別荘街みたいなものもあったんですが、日本の古民家の中を50年代に本国アメリカで流行ったランチハウススタイルに改造していて、そのウッディな雰囲気がとても気持ち良かった。決して贅沢ではないけれど、トイレなどの設備をきちんと調えて居心地のいい空間にしてありました。
ですから、すでにその時代から外国人が古民家を新しくリノべートするという発想はあったわけです。