情報誌CEL
高齢者の社会参加と健康長寿の関連性について
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備考 |
2016年11月01日
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遠座 俊明
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住まい・生活
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ライフスタイル
その他
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情報誌CEL
(Vol.114) |
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高齢者のためのより良い生き方を考える
第一線で忙しく働く世代は、自身の老後について考え、準備する余裕はなかなかない。
しかし、定年退職後の人生は長く重要な問題でもある。
いかに健康的に、いかに社会と関わりながら充実した老後を過ごしていけるのか――
高齢者に対するさまざまな調査結果から検証する。
はじめに
23年前、宝塚で「高齢者問題を考え行動する会」に参加して以来、デイ・サービス事業を運営するNPOを支援し、またNPOやソーシャルビジネスなどの市民の社会参加活動をサポートする中間支援団体の経営にボランティアながら関わってきた。自らの体験も踏まえながらこれからの長寿社会について考えていきたい。
日本の高齢者(65歳以上)比率は2005年に20%を超え先進諸国のなかで最も高い水準になったが、2015年には26%を超えた。さらに団塊ジュニアと呼ばれる人たちが65歳を超える2040年頃まで高齢者の絶対数は増加し続け、少子化と相まってその比率は2060年頃まで上昇していくことが予測されている。急速な高齢化により年金や医療・介護などの高齢者関係社会保障給付費が激増しており、2013年度には75兆円を超え、わが国の国民所得の二十数%を占めるに至っている。将来世代は今後の負担の大きさに自分たちの将来への諦めさえ抱いていると言われている。
今回は、持続可能な社会づくりに対し、高齢者の健康自立について、生活が変化する際生じやすい生活不活発病と社会参加の効用という視点で概観してみる。
高齢者の就労・社会参加の状況と団塊世代の動向
総務省「労働力調査」によれば65歳以上で働いている人は2015年に744万人、高齢者全体3392万人の21.9%で、これは全労働力人口の11.3%を占める。そのうち雇用者は458万人で、団塊の世代がこの年齢層に到達したためこの5年間で約1.5倍に増加した。同省の「就業構造基本調査」(2012年)によれば、自営業や役員も含めると65〜69歳で男性は49.0%、女性は29.8%が働いている。
かつて団塊世代の大量定年退職をめぐる2007年問題が取りざたされた時期があった。各地で団塊世代の社会参加を見込んで地域デビュープログラムなどが盛んに企画されたのだが、現在も働いている人が多いこともあり、結果として団塊世代の地域社会への参加は期待されたほど進んでいない。