情報誌CEL
日本流起業エコシステムを考える
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
2017年03月01日
|
奥田 浩二
|
都市・コミュニティ
|
コミュニティ・デザイン
その他
地域活性化
|
情報誌CEL
(Vol.115) |
|
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
高度経済成長期「ベンチャー」の都・京都では何が起こっていたのか
日本においてベンチャー企業の誕生や成長を支える仕組みづくりはいかに可能か。戦後の京都における事例から、地域の歴史や風土に根ざした起業・創業支援のシステムを「再起動」してゆくための道筋を探る。
はじめに
国民経済が発展していくためには、経済発展のためのエンジンが駆動しなければならない。そのエンジンとして重要な役割を果たすのは起業活動である(*1)。
起業活動、特にベンチャー企業の立ち上げは、国策のなかでも重視されている。日本経済再生本部による「ベンチャー・チャレンジ2020」(以下、「2020」)(*2)では、「『希望を生み出す強い経済』の成否は、イノベーションにかかっている」とし、ベンチャー企業をその担い手と位置付けている。そして、ベンチャー企業を生み出し、成長を実現していくためには「ベンチャー・エコシステム」(以下、エコシステム)の構築が重要だと述べている。ここで言うエコシステムとは「起業家、既存企業、大学、研究機関、金融機関、公的機関等の構成主体が共存共栄し、企業の創出、成長、成熟、再生の過程が循環する仕組み(生態系)」である(*3)。
このような仕組みの構築で目標とされるのは米国、特にシリコンバレーである。筆者は、本誌111号・112号や学術論文誌において先進事例の特徴を分析し、どのようにすれば日本の現状に則した仕組みが実現できるかについて考察してきた(*4)。
先進事例の分析は重要である。しかし、そのときに日本らしさをきちんと評価しておくことも重要である。
例えば、「2020」では、日本においてエコシステムは実在するか、という問いに「残念ながら、答えは否である」と主張している。
(*1)『中小企業・ベンチャー企業論(新版)』(植田浩史他著、2014年、有斐閣コンパクト、255頁)
(*2)日本経済再生本部資料(2016年4月19日決定)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/honbun_160419.pdf
(*3)同前(2頁)
(*4)「米国イノベーション地域におけるイノベーション・サポート・システムの特徴とその変化(前編・後編)」『CEL』111・112号(奥田浩二著、2015〜2016年、大阪ガス)、「米国の事例から学ぶベンチャー企業の起業・成長支援の仕組みのあり方」『龍谷大学経営学論集』第55巻4号(奥田浩二著、2016年、1〜16頁)