松岡 正剛
池永 寛明
作成年月日 |
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2017年07月03日 |
松岡 正剛 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.116) |
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― ルネッセ特集にあたって
日本的な価値は、古来、我々の生活文化の基盤であった都市に埋め込まれている。
連続特集企画「ルネッセ(Renesse)」では、古今東西の情報から日本を日本ならしめる編集法を研究してきた松岡正剛氏をスーパー・アドバイザーに迎え、日本的な「本質」を再起動させ、それを現代・未来につなげるべく道筋を縦横無尽に提示する。
都市に埋め込まれた本質を掘り起こし、再起動へ
池永:情報誌『CEL』は創刊30周年を迎え、今号から3号を、「ルネッセ(Renesse)」をテーマに日本のこれからを考えていきます。「ルネッセ(再起動)」とは、ラテン語の「再び(ren)」と「実在する(esse)」を組み合わせた造語です。
地域社会に関わるなかで感じることがあります。江戸時代以来「ないものからつくりつづける」東京に対して、明治以来「なくしたことを隠しつづける」大阪という地域構造の課題です。
さらに日本は少子高齢が進み、社会・産業構造も大きく変化しているにもかかわらず、価値観や制度や仕組みが従来のままであるため、諸相に適合不全が顕れています。
私たちの生活文化の基盤「都市」にある本質を過去より掘り起こし、現代・未来へとつないでいくことができないだろうか。古来より都市が形成された近畿圏には日本的なる「本質」が育まれ存在しているはずなのに忘却している。この本質を「ルネッセ(再起動)」させることで、都市に新たな価値を創造できないかと考えています。
その先駆けとして、「近畿における消費行動の分析」を行いました。近畿圏の動きを現在の行政区分と旧令制国区分で比べてみると、大阪府より摂津国と捉えた方が地域の人の行動や消費構造が鮮明になりました。「ルネッセ」的に考えていくことが必要ではないかと考えています。
松岡:その視点はおもしろいですね。先日、関西のある銀行関係者と話をする機会がありましたが、同じ問題意識を感じました。
池永:新しいものに対する受容性が低いという実態も浮き彫りとなり、これも近畿圏の地盤沈下の一因かもしれません。首都圏や中部圏に比べてスマホやeコマースの利用が遅れています。かつてはどこよりも新たなものを受け入れ、スピーディに自分のものにしていたはずです。阪神・淡路大震災を体験しているにもかかわらず地震保険の加入率が低い。未来を考えるよりも短期的な行動をとるという傾向が強い。