シモーナ・マスキ
池永 寛明
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2018年07月01日 |
シモーナ・マスキ |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.119) |
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世界一幸福な国とも言われ、経済から人の暮らし方、食、デザインなどさまざまな領域で注目を集めるデンマーク。その「豊かさ」を育む力はどこからくるのか。コペンハーゲンにある新しいデザインスクール兼研究機関で、その独自の取り組みから世界の注目を集めるCIID(Copenhagen Institute of Interaction Design)と、人間中心のまちづくりで時代をリードする世界的都市デザイン事務所ゲール(Gehl)の2カ所を訪問し、担当者にそれぞれお話を伺った。
多様なバックグラウンドをもった学生たち
池永:私たちは日本の過去と未来をつなげ、外からも学びながら新しいものを創造するために「ルネッセ」と名付けた活動を展開しています。ここCIIDで実践されているデザイン思考には、たんなるものづくりの理論であることを超え、過去のものづくりと共通するような哲学があり、新しい時代に適応するためのヒントが多くあるように感じます。CIIDは過去の何を学び、どのように新しい価値を生み出そうとしているのか? それを、ぜひ知りたいのです。
マスキ:CIIDは2006年に創立されたインタラクションデザインに特化した調査・研究機関であり、学校でもあります。ですから、私たちはデザインをするだけではなく、デザインそのものの考え方を追求したいと思っています。ここでいうデザインとは、人間の生活というものを中心においたイノベーションであり、ご指摘の通り、それは過去のものづくりとも深くつながっていると思います。
池永:創造的で魅力的なプログラムに惹かれ、日本を含めてさまざまな国から優秀な学生たちが集まっていますね。
マスキ:3階建ての建物の1階部分が学校ですが、昨年も世界中から200名近い応募がありました。このうち、私たちは毎年24名の学生を選びます。けれども私たちは、能力が優れた学生を上から選ぶようなことはしません。選考過程においては、チームとして何ができるかを最も重視するのです。
池永:あえてバックグラウンドの違う学生を採用しているのですか?
マスキ:その通りです。国籍や性別はもちろん、なるべく違う教育を受けた人を選んでいます。もちろん芸術的な素養をもったデザイン専攻の学生もおられますが、半分くらいは技術系の学生です。
池永 それほど多様性をもった学生たちが、どのように学んでいくのでしょうか?
マスキ:私たちは、「考えながら学ぶ」ということを大切にしています。そのため、チームをつくっていくことが大切です。ここにいる人たちはみな英語を話しますが、北欧訛り、イタリア訛り、インド訛り、中国訛りなど、癖のある英語が飛び交っていますよ。けれどもその英語より、ものづくりにおける「プロトタイプ」それ自体が、最も重要な共通言語となるのです。