CEL編集室
2018年07月01日作成年月日 |
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2018年07月01日 |
CEL編集室 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.119) |
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歩ける都市の壮大な実験
コペンハーゲンを東西に貫く約1キロメートルほどの目抜き通りストロイエは、毎日多くの人で賑わう、ヨーロッパでも最長の歩行者天国のひとつとして知られている。デンマークを代表する建築家・都市デザイナー、ヤン・ゲール(Jan Gehl)氏が創立したゲールはその西端にあたる市庁舎広場から、少し西へ離れたところにある。彼の名はそのストロイエとともに世界中へ広がったといっても過言ではない。自動車ではなく、歩く人々を主役とした都市生活が、どれほど豊かなものか。その思想は静かに、そしてゆっくりと世界中の都市生活に影響をあたえつつある。
「1980年代から90年代にかけて、コペンハーゲンは『倒産』という言葉で表現されるほどのひどい状況でした。経済的に疲弊していただけでなく、都市としての魅力もなく、誰も住みたがらないまちだったのです」
今は「世界一住みやすい」とも称されるコペンハーゲンの過去をそう表現するのは、『パブリックライフ学入門』の共著者でもあるビアギッテ・スヴァア(Birgitte Svarre)氏。ゲール氏たちの詳細な調査・分析にもとづくアドバイスが行政を動かし、少しずつ都市のあり方を変えてきた、その道のりをよく知る人物だ。
「たとえば、ここには自転車文化とでもいうべきものがあり、今は大きな意義をもっています。自転車道路が市の全域に張り巡らされていますが、これも80年代にはそれほどではありませんでした。私たちは、コペンハーゲンをいわば実験室のような場所として使っています。人々はどのように公共空間を使っているのか? 詳細な調査を繰り返し行ってきました。何か新しいものをつくったら、それが誰にどんな変化を起こしたのかを観察して、細かく記録をとって伝えてきたのです」
人々はその場所で
どんな時間を過ごしたいのか?
コペンハーゲンにおけるそうした蓄積が、世界で求められるものになりつつある。スヴァア氏によれば、ゲールのコペンハーゲン本社は45人のスタッフを抱えている。このうち、最も多いのは建築およびランドスケープの専門家だが、ほかにもスヴァア氏のような現代の比較文化や文化人類学を専門とするスタッフなど、多様な知性が集う。海外からのコンサルティング依頼が多くなった今はニューヨークとサンフランシスコにも支社をもち、世界各地に10名のリーダーをプロジェクトごとに配置して、現地スタッフとともに仕事を行っている。
「詳細な調査やさまざまな視点からの分析が大切なのはもちろんですが、地元の専門家との連携もひじょうに重視しています。その場所がもつ歴史的、文化的コンテクストを理解している人々が提供してくれる深い知を入手できなければ、真の問題解決にはつながりません」