中原 淳
2018年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
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2018年07月01日 |
中原 淳 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.119) |
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国内外を問わずますます多様化していく世の中において、企業のあり方とそこで働く人々の意識の変革も求められている。
そのカギとなるのが、他者との「対話」を通し、新たな創造性につなげていく「学び」のスタイルだ。
「人生100年時代」ともいわれるこれからの時代を生き抜くために、いま身につけておくべき「本当の学び方」を、企業の現場にも通暁する「大人の学び」のスペシャリスト中原淳氏に伺った。
なぜいま、大人が学び続けなければならないのか
かつて、定年退職を迎える55歳から先は「余生」と言われました。それがいつのまにか、定年は60歳以降、さらに65歳となり、そして高齢者の定義も変わり、我々の社会は「定年レス」とも呼ぶべき世界に突入しつつあります。
こうした時代、人々は長い時間をかけて仕事人生を完走しなければならず、登山に例えれば、登山・下山・再登山を繰り返さねばならない人が増えることも予想されます。そのため、一度学生時代に何かを学び終えても、そのままで生き続けることは難しくなってきています。大人になり社会に出た後にも何かを新たに学び、身につける、「大人の学び」ともいうべき考え方が非常に重要になってきました。それは、いわゆる「資格取得」などではなく、私たちの仕事人生が非常に長期間化しているがゆえに必要になってきた学びです。
心理学者の河合隼雄氏の著書を参考に、社会の枠組みという面から考えてみたいと思います。図1のように、古代において社会の変化は非常にゆっくりとしたものだったため、人は人生においてあるひとつの「できあがった世界」にしか相対しませんでした。しかし、近代以降、人が一生に相対する世界が、時間とともに「枠」ごとに変化し進化するようになりました。つまり「社会が進歩する」ようになったのです。そして現在、この「枠の変化」が、きわめて速くなっているといえます。
これを現代の企業に置き換えてみます。数年前まで、自動車メーカーは自動車をつくる会社として大いに機能していましたが、いまや時代を担うドメイン(事業領域)は自動車ではなく「モビリティ」だという話もよく耳にします。つまり、「自分、または自分の働いている企業は何者なのか」ということまで、根こそぎ変わっていくような時代に私たちは生きているのです。変化すること=学ぶことと、ずっと付き合っていかざるを得ないのはそのためです。
特に、日本の企業の場合、ひとつの会社で長く働き続けるという雇用慣行が定着しています。これはどちらかというと、アメリカ型ではなくヨーロッパ型の社会に近いもので、組織の内部に労働市場があります。アメリカ型社会では外部に労働市場があるため、人は企業・組織から自由に出入りできます。企業の変化についていけなければ、人をリプレイス(置換)すればよいのです。一方、日本は内部に労働市場があるので、企業の組織や戦略、方向性が変われば、中の人も組織のそのズレに従い変わらなければなりません。変わることが絶対的に必要なので、そのための「学び」にもきっちり向き合っていかなければなりません。