松井 忠三
2018年07月01日作成年月日 |
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2018年07月01日 |
松井 忠三 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.119) |
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国内の市場が縮減するのに伴い、海外へ進出する企業が増えているが、成功させているところは多くない。
そうしたなか、(株)良品計画の「無印良品(MUJI)」は、海外出店を順調に進めている。
成功の立役者である前会長の松井忠三氏に、実践から生み出された方法論を教えていただく。
スタートから11年間赤字だった海外事業
無印良品の海外店舗数は、474店舗(2018年2月現在 ※Cafe&MealMUJIを含む)と今や国内店舗数を上回り、アジアを中心に、ヨーロッパ、アメリカ、中東など、27の国や地域に出店しています。国・地域の数では日本の小売業でいちばん多く、「なぜ無印良品は海外でもそんなにうまくいくのでしょうか」とよく聞かれます。
しかし、ここに至るまでの道は決して平坦ではありませんでした。私が社長に就任した2001年、良品計画は経営危機に陥っていましたが、その原因の一端は海外事業にありました。実は海外進出をスタートした1991年から11年間、ずっと赤字だったのです。
状況を考えると海外からの全面撤退もありえましたが、私はそれはもったいない、なんとかもう一度やれる方法はないかと考えました。というのも、なかには黒字の店もありましたし、すでに前社長のときに全面撤退していたアジアのお客さまからは「MUJIにもう一度出店してほしい」というカムバックコールのメールが相次いでいたからです。
また、実際に国内外の店舗をバタバタと閉め、フランスでは大幅な人員整理までしましたが、リストラだけでは企業は立ち直りません。苦しい状況であっても成長の芽を育てるための種まきは必要であり、勝てるパターンをつくり上げないとダメだと、次第に痛感するようになりました。
失敗の原因を徹底的に分析する
その後、なぜ赤字になるのか、その原因を必死になって分析しはじめました。
まず、すでに閉めていた1号店のロンドン店や2号店の香港店がうまくいかなかった理由は明確でした。前者は老舗のリバティ百貨店、後者も百貨店のグループであるウィンオングループから声がかかって出店したのですが、パートナーと組んだことが失敗の原因です。自分と相手とでは、考えていることも戦略も経営状態も違いますから、「同床異夢」ではうまくいきません。ここから学んだのは、オペレーションは自前でやるということです。
次に、だんだんわかってきたのは、売り上げに対する家賃比率の重要性です。たとえば、ロンドンの目抜き通りにある店は年間5億円以上もの売り上げがあるのに、家賃が非常に高く、売り上げに占める比率が19%近くに達していました。これではいくら繁盛しても黒字化はむずかしい。特にロンドンは王室と貴族が土地と建物の大半を所有しており、彼らには相続税がないため、所有者はよほどのことがない限り変わりません。したがって、物件の供給は非常に少なく、契約期間も20年、25年といった強気の設定です。一方、物件を借りたいという需要は大変多く、家賃の水準はひたすら上がる一方です。