情報誌CEL
【レポート】「内と外」「過去と現在」でつながる食文化
−ルネッセ・セミナー「食で、まちを変えられるのか」報告
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2019年03月01日
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CEL編集室 |
都市・コミュニティ
住まい・生活
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コミュニティ・デザイン
地域活性化
食生活
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情報誌CEL
(Vol.121) |
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都市や地域社会の価値・活力を、どうすれば再起動させることができるのか?
2018年12月に行われたルネッセ・セミナーのテーマは、「食で、まちを変えられるのか」。そして、これに相応しいゲストとして、ふたりの料理人を招いた。ひとりは、かつて奈良県東吉野村で「リストランテ ロアジ」を開業したイタリア料理シェフ・永松信一氏。もうひとりは「日本料理 かこみ」を開業し、江戸時代の大坂料理の再現にも取り組んでいる若手料理人・栫山一希氏である。「異色の組み合わせ」への関心も高く、会場には食やまちづくりといった仕事に携わる人たちだけでなく、ビジネスマンや主婦といった幅広い層から熱心な参加者が集まった。
五感で感じる大阪は、それほど変わっていない「大阪のイメージを色で表すと何色ですか?」「大阪の音といえば何を思い浮かべますか?」「大阪の匂いは?」「大阪の味は?」「大阪のイメージはかたい?やわらかい?」少々意外ともいえる質問の連続から始まった今回のセミナー。まずは大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所の池永寛明所長が問題提起を行った。目に見える色や形、耳に聴こえる音、そして匂いや味、さらには触覚まで。人びとが五感で抱く「大阪のイメージ」には、「内と外」で大きなギャップがあるようだ。たとえば大阪に暮らしている人の多くは、自分のまちを「水の都=青」と感じているのに対し、外部の人が抱く大阪のイメージは活動的な赤だったり、阪神タイガースの黄色だったりする。
うるさい、治安が悪い、装いが派手……。大阪に押しつけられた、こうした負のイメージの多くは、1960年代以降にメディアを通して拡散・形成されたものが多いという。それに対し、実際に大阪で暮らしている人びとが普段からもっているイメージを分析してみると、むしろ歴史的に脈々と受け継がれてきたリアルなまちの姿に近いものであることが分かってくる。
「今、多くの外国人が大阪に魅力を感じており、外国人観光客訪問率は国内トップになりました。世界における『住みやすい都市ランキング2018』でも、ウィーン、メルボルンに次いで三位に選ばれています(表)。でも実をいうと、大坂は江戸時代の頃から今と変わらず水の都であって、日本一の観光都市だったのです。訪れる人は、行き交うたくさんの船や天満青物市場などを見て『天下の台所』の活力を感じました。そして四天王寺や大坂城を訪れ、道頓堀で芝居を楽しみ、さらに大坂料理を食べた。大坂にはかつて『浮瀬』とか『西照庵』といった、誰もが一生に一度は行きたいと思っているような料亭があったのです(池永)」