小田切 徳美
2019年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2019年11月01日 |
小田切 徳美 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.123) |
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ハードルの高い「移住」でもなく、一過性の「観光客」でもない
いわば第3の人口ともいえる「関係人口」という考え方に今注目が集まっている。離れていても、ある地域に愛着を感じ、応援し、役立つことができる多様なかたちを有する「関係人口」は、今後、都市と農村が共生する新たな社会へ導くものとなり得るのか? 背景やその可能性を考察し新たなよそ者像としての未来への可能性をさぐる。
はじめに――活発化する「関係人口」論議
本稿がテーマとする「関係人口」は、「新語」ではあるが急速に世の中に拡がっている。たとえば、政府会議における首相挨拶や新聞紙上にも登場する用語である。
前者に関しては、地方創生の新しい方針を決めた会議において、安倍総理の次のような発言が記録されている。
「安倍内閣総理大臣――そうした観点から、例えば、週末の地方での兼業・副業など、関係人口の創出・拡大によって、将来的な地方移住につなげることや、企業版ふるさと納税の活用促進による、地方の魅力を一層高めていく取組などの政策を通じて、地方への人・資金の流れを重層的な形でもっと太いものにしていきたいと考えています――」(まち・ひと・しごと創生会議、2019年6月1日)
また、後者の例として、「日本経済新聞」の最近の社説が次のように触れている。
「政府は地方創生の第2期として2020年度から5年間の基本方針を決めた。都市に住みながら地方にかかわる「関係人口」を増やし、交流によって活性化することを柱にする。東京一極集中の是正という課題を直視するのを避けた形で、もっと正面から東京一極集中に向き合う必要がある」(2019年6月24日)
これらの例からわかるのは、新語であるにもかかわらず、賛否を分かつ対象となっていることである。今後、ますます議論を呼びつつ、普及していく言葉であることが予想され、その意味で「現代的キーワード」であろう。本稿では、この言葉の意味、背景や意義、そして政策的課題について、まとめてみたい。