CEL編集室
2019年11月01日作成年月日 |
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2019年11月01日 |
CEL編集室 |
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情報誌CEL (Vol.123) |
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2030年に迎える超高齢社会の具体的な姿をイメージし、今取り組むべきことを参加者と考えようと始まったのが大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所主催「高齢社会2030を考える会」だ。その第2回が2019年5月28日に開催された。テーマは「認知症」。
参加者にとってこれまでの認知症への意識を変える、有意義なものとなった。
認知症の「本質」を知る――共感的理解の重要性
考える会第2回のテーマは「認知症 それがどうした!と笑い飛ばせる地域社会の未来」である。
第1部は田中雅人大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所(CEL)所長の挨拶の後、小川敬之京都橘大学健康科学部教授が登壇した。小川氏は作業療法士などを経て現職に就く傍ら、NPO法人の理事長として認知症と共生する社会づくりの実践活動にも取り組んでいる。
講演では冒頭に「認知症の本質的なところを感じ取ってもらえれば」と前置きしたうえで、さまざまなデータ等を提示しながら、認知症の捉え方そのものが世界的に変わってきていることをあげた。
認知症の中心的な症状は、かつては記憶障害と捉えられていたが、現在では社会的認知の障害、つまり自分自身や環境・物、そして人との関係が崩れていく「関係性の障害」と考えられているそうである。
たとえば、認知症の人は服を着る動作がうまく行えないというような、生活のいたる場面で周りからは見えない「つまずき」「混乱」をたくさん経験しており、それが重なることで不安や恐怖感、絶望感を抱いてしまい、しかもそれが目に見えないことが周囲の理解を阻んでいる。だからこそ、その生活支援には「その人がどのような風景を見ていて、どのような混乱状況に陥っているのかを考えることが大切だ」という。これまで「認知症=世話を必要とする人」という偏った視点だけで捉えていたことを痛感しながら、小川氏の言う認知症の「本質」を知るキーワードのひとつは、当事者の混乱や不安も把握しようと努める「共感的理解」であろうか、と感じた。
さらに認知症の人には「できることもたくさんある。できることで元気になる」とし、先にあげた服の着方で混乱が始まった場合には、「仕切りなおす」ことで、できるはずの自分(プライド)をサポートするという実例や、認知症であっても有償ボランティアの形で働く宮崎や京都の施設での事例をあげた。