飯田 豊
2020年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2020年03月01日 |
飯田 豊 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.124) |
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拡張現実(AR)の現在地
――渋谷から考える
21世紀に入り、猛烈な勢いで進化を遂げ続けているコミュニケーション技術。
なかでも目覚ましいのが、ネット空間でのヴァーチャルな展開だ。
人・モノ・カネが仮想空間へ流れ込みつつある現在――
リアルなコミュニケーションもまた、次の段階へと向かいつつある。
音楽フェスやストリート・イベントの活況、オンラインゲームとの連動などは、まさにヴァーチャルとリアルの結合による、新たな活動領域といえるだろう。
時代の先端を行く渋谷の街から見た、仮想と現実の過去・現在・未来とは?
商業施設で活用されるAR技術
2019年11月下旬、一時休業していた渋谷パルコが、建て替え工事を経て再び開業した。その地下にある「ティフォニウム・カフェ」では、「魔法パフェ」というメニューを提供している。注文したパフェを待つあいだ、コースターに専用のタブレットをかざすと、インタラクティヴな映像表現を楽しむことができ、パフェが届くとその演出はクライマックスを迎える。この店舗をプロデュースしているのは、お台場と渋谷にあるVRエンターテインメント施設「ティフォニウム」を手掛けるティフォン社。現在はTBSの関連会社であり、共同でコンテンツビジネスの開発に取り組んでいる。
また、2019年12月には、渋谷で開催されたデジタルアートと電子音楽の祭典「MUTEK.JP 2019」の一環として、「INVISIBLE ART IN PUBLIC Vol.2 “Synthetic Landscapes”」というイベントが開催された。スクランブル交差点をはじめ、駅周辺のいくつかの商業施設に掲示されたQRコードを読み取り、専用アプリをダウンロードすることで、カメラで捉えた現実の風景に、映像や音楽が重なり合うという仕組みだ。そして渋谷パルコでは「AKIRA ART OF WALL --INVISIBLE ART IN PUBLIC--」という関連イベントも開催された。建て替え工事の3年間、ここには大友克洋の『AKIRA』をコラージュした仮囲い「AKIRA ART WALL」が設置されていたが、専用アプリを通じてその一部を鑑賞できるという趣向である。
いわゆる「百年に一度の再開発」が進んでいる渋谷の商業施設では、近頃このようにAR(Augmented Reality=拡張現実)を活用した試みが目立つ。次世代通信規格「5G」を活用したエンターテインメント事業の中核地と目されているためである。VR(Virtual Reality=仮想現実)が、目の前にある現実とは異なる仮想世界を体験できる技術であるのに対し、ARとは、目の前にある現実に新しい情報や価値を付け加える技術である。