太田 剛
2020年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2020年03月01日 |
太田 剛 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.124) |
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新世代図書館がヒト・モノ・コトの結びつきを取り戻す
今、日本各地で公共図書館を新たな「ハブ」とした、地域の再活性化がさまざまな形で進められている。
従来の、本を並べ、貸し出すだけの図書館から、ソーシャルイノベーションを目指す新世代の図書館へ。
そこでは何が変わり、何が生まれようとしているのか?
自らも日本全国で企画・運営にたずさわる太田剛さんに、進化する図書館の“現場力”についてうかがった。
戦後の図書館はどのように生まれたか?
本はヒト・モノ・コトをつなぐ存在です。著者と読者だけではありません。さまざまな形でヒトとヒトをつなぎ、ヒトとモノやコトをつなぐ。さらにモノとモノ、コトとコトもつなぎます。本は、あらゆる組み合わせで異なるものを結びつけ、出会いを生むことができる力をもっている。だから図書館というのは、そういう無限のつながりが生まれる可能性をもった場所なのだと思います。
ところが日本では、多くの図書館が既成概念に縛られ、時代に取り残された退屈な場所になっているように思えます。なぜなのでしょうか? 歴史を振り返ってみると、戦後日本では図書館がGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)指導のもとで始まったからといえるでしょう。CIE(民間情報教育局)が各地にアメリカ式の図書館をつくり、日本の官僚も熱心に討議を重ね、なんとか図書館法の成立まで漕ぎつけますが、なかなか実態は伴わなかったようです。
これに対して、現在の私たちになじみ深い図書館のあり方に大きな影響を与えたのが、1963年に出された「中小都市における公共図書館の運営」(通称「中小レポート」)、さらには1970年の「市民の図書館」という2つの指針でした。これらの影響を受ける形で定着したのが、「とにかく貸し出し数を増やそう」「あらゆる場所に図書館サービスを届けよう」という考え方です。移動図書館を充実させ、児童書に力を入れたのが、その大きな特徴といえますが、結果として小説などのベストセラーや、市民が読みたがる流行本を大量に購入し、「安易な読書推進」に走る図書館がたくさんできてしまいました。
実は、日本にある図書館の多くが今もこのタイプです。私はこれを〝第2世代〟の図書館と呼んでいます。戦後最初にGHQ指導下でつくられながら定着しなかった〝第1世代〟の図書館に対し、貸し出し数を競いながら市民に近づいていった、これら第2世代の図書館にも、もちろん評価できる部分は大いにあるでしょう。