林 要
2020年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2020年03月01日 |
林 要 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.124) |
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最先端テクノロジーとデザインの融合が、無機物に魂を吹き込む
――ロボットと人間の新しい関係
〝愛を育む家族型ロボット〟という斬新なコンセプトによって生まれた「LOVOT(らぼっと)」。
ペットと同じように愛情を注ぐ対象で、人に代わって仕事をしてくれるわけではない。
生活を便利にしてくれる機械とは対極にあるコンセプトをもつロボットは、さまざまな分野の英知を結集してつくられている。
GROOVE Xの代表・林要氏が語る開発ヒストリーから、異分野のつなげ方に迫る。
人間ではないモノの価値はどこにあるのか?
子どものときに犬を飼いたいと思ったことはあります。アニメに出てくるような可愛い小動物への憧れも、ありました。私は『風の谷のナウシカ』が好きだったので、ヒロインの肩にいつも乗っているテトのような相棒が欲しい、と思っていたものです。でも、そういう自分の気持ちをロボットと結びつけたことはありませんでした。これまで人生のなかで、ロボットの友達が欲しいとか、可愛いロボットをペットにしたいとか強く思っていたかと言えば、そんなことはなかったのです。
ですからLOVOTは、自分の欲しいものを形にしたというより、今、世界で求められているロボットはこれなのではないか? という私の理解が形になったものです。
LOVOTの開発をしながら、そういえば私も潜在的にこういうものを欲していたんだと気づく。そういう過程でもありました。
人間とロボットの関係について深く考えるようになったのは、前職でPepperの開発に携わってからでした。人間とモノ、人間と動物など、人間とは異なるものと人間の関係について考えるようになりました。
たとえばPepperがちゃんと作動せず、うまく立ち上がらないときがありました。そんなとき、皆さんが応援してくださる。その結果、今度はうまく立ち上がって、拍手が起きる……。もちろん正確に言えば、それは「応援があったから」ではありません。正常に機能していなかったソフトウェアが、今度は再起動でうまく動いただけ。でも、その場のコンテクストとしては、想いが届いたと考える方が盛り上がるし、私たちは心のどこかでそう思いたい。そういうストーリーがあれば、自然に新しい存在であるPepperへの愛着も湧いてくる。