石山 恒貴
2020年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2020年07月01日 |
石山 恒貴 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.125) |
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組織の活動――想像・創造する学び
本業にも活きる「越境的学習」のススメ
勤続年数が長くなれば、仕事の手順や段取りを熟知し、職場は快適な「ホーム」になっていく。しかし、安住していては成長できない。NEC、GEなどで人事のプロフェッショナルとして人材育成に携わった経験を持つ法政大学大学院政策創造研究科長の石山恒貴教授は、慣れ親しんだ職場を抜け出し、異質な人々が集うなかで学ぶことの重要性を説く。越境的学習の意義や実践例と、その効果や課題について考察する。
「ホーム」と「アウェイ」を自発的に往還する
越境的学習とは、自らが所属する組織である「ホーム」と、そうではない場所である「アウェイ」を往還する、つまり行ったり来たりすることで得られる学びです。アウェイは知らない人たちばかりで、社内用語も通じず、居心地は良くありません。でも、普段接している考え方とは違う思考を知ることができますし、そこで獲得した新たな視点を本業に役立てられる可能性があります。
このような説明をすると、「それは人事異動や出向のことですね」と言う人がいます。しかし、人事異動や出向では、アウェイが第二のホームになるだけで、戻りはしません。すると往還ではなくなります。人事異動は単なる移行です。
では、「越境」とは具体的にどういう行動を指すのか。分かりやすいのが、個人がプライベートな時間に、所属する組織とは全く違う場所へ身を投じることです。図1に示すように、自治会や消防団、PTAのような地縁コミュニティの義務的共同体で活動するのも越境といえます。趣味やサークル、同好会への所属も越境的行為といえるでしょう。
私が特に注目したいのは、目的があり、かつ自発的に交流する「サードプレイス」の場です。サードプレイスとは、家庭でも職場でもない、第三のとびきり居心地のいい場所という意味です。地域のNPO、読書会・勉強会、コミュニティカフェなどといった目的交流型のサードプレイスは、良質な学びを得られる可能性が高まります。プロボノと呼ばれる、自分のビジネススキルを活かして行うボランティアもサードプレイス型の越境になります。
関西の大企業系列の不動産会社に勤めている人が「異業種交流会では物足りない。自分で活動を始めよう」と思い立ち、読書会の主催者になったところ、たくさん人が集まるようになったという例があります。その方は「毎回、参加者のなかには自分が全く知らないことを教えてくれる人がいるから、よい刺激になる」と言っていました。