佐宗 邦威
2020年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2020年07月01日 |
佐宗 邦威 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.125) |
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組織の活動――想像・創造する学び
直感や妄想を起点に
学びを最大化する「ビジョン・ドリブン」
不確実で先の読めないVUCA*の時代には、分析しても正解を得られるとは限らない。
答えは自らつくりださなければならない。
そのために取り入れるべき、直感や妄想が駆動する「ビジョン・ドリブン」な学びのあり方とは、どのようなものであろうか。
* V(Volatility=変動)、U(Uncertainty=不確実)、C(Complexity=複雑)、A(Ambiguity=曖昧)の4つの要因により、現在の社会経済環境がきわめて予測困難な状況にあることを表す言葉。
学びが手段ではなく目的となる時代
大量のモノを効率的につくるというベストプラクティス(模範的実践事例)を最大化しようとした20世紀の大企業では、学びは価値を創造するための知識を内部で共有することを意味していました。マニュアルやカイゼンといったものがもてはやされたのも、それらがチームのもっている暗黙知を共有する重要な手段として、有効だったからでしょう。しかし、20世紀末以来の情報革命によって、企業の存在意義は大きく変わりました。今や新しい知恵をリアルタイムに生み続けることが最も大きな価値となった時代であり、それにつれて企業における学びのあり方も変わっていかざるをえないのです。
21世紀において新しい知恵が生まれる場所は、もはや企業の内部ではありません。それは企業とユーザー、あるいは企業とパートナーが結び合う接点、もしくはその対角線上に生まれるものです。そのため、企業が何かを生み出そうとする際には、外部に開かれた、より多くのノード(結節点)をもつことが不可欠な条件になるでしょう。
『ひとりの妄想で未来は変わる』という著書のなかで、私は時代の要請に即したあるべき組織の形を「△から○への移行」と表現しました(表)。効率的な分業とトップダウンの戦略を特徴とする「生産する組織」から、個人が創発し合いボトムアップで意思決定を行う「創造する組織」へ。学びという側面から見るなら、ひとつひとつのノードが外部と出会う機会をなるべく多く、アイデアや知恵が生まれやすい環境をつくることが、企業の目指すべき進化の道となるでしょう。つまり、△の「生産する組織」では学びは手段でしたが、○の「創造する組織」においては学びが目的なのです。そういう、非常に大きなパラダイム転換が今、起きているのだと思います。