巻口 隆憲
2020年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2020年07月01日 |
巻口 隆憲 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.125) |
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組織の活動――想像・創造する学び
リクルートグループの成長を支える学び
数多くの新規事業を創出し成功に導いてきたリクルートグループ。その根底には、創業以来学び続ける組織の取り組みがある。これからの企業や組織における学びのあり方として参考になるのではないか。リクルート経営コンピタンス研究所所長の巻口隆憲氏に伺った。
紙からネットへの自己革新を促した学び
1996年にオンラインで新卒者向けの就職情報を提供する「リクナビ」(当時は「RECRUIT BOOK on the NET」)をいちはやく立ち上げたリクルートグループ(以下、リクルート)は、それから四半世紀にわたりインターネットの普及という巨大な波と正面から格闘してきた。現在のリクルートがネット上で展開するさまざまな情報サービスの隆盛を見れば、あらためて驚かずにはいられない。当時のリクルートはまだ、『B–ing』『とらばーゆ』『ガテン』『週刊住宅情報』『AB–ROAD』など、分厚い情報誌をいくつも発行して書店を賑わす紙の出版社というイメージが強かったからだ。売っているのは紙ではなく情報であると分かってはいても、これから起きようとしている革命を目の前にしたとき、リクルートは守る側の巨人として映った。振り返ってみれば、インターネットの普及は長い間、攻める側と守る側がはっきりと見える戦いだった。そのなかで、なぜリクルートは守勢にまわることなく、紙からインターネットへと自己変革を遂げることができたのだろうか。
その謎を解明しようとした研究者に、スイス・ローザンヌのビジネススクール、IMD(国際経営開発研究所)教授のハワード・ユー氏がいる。「トップダウンでもなくボトムアップでもなく、レイヤー(階層)が変わってもさまざまな組織がそれぞれイノベーティブに動いている」と、激変する環境のなかで革新的なビジネスモデルをつくり続けることのできた柔軟性を賞賛する。ユー氏が注目したのは、内向きになりがちな大企業でありながら、経営層だけでなくミドルマネジメント層をはじめすべての社員が、常に外部環境への興味と関心をもっていたという事実。リクルートにおいては、新しいことの学びが常に外に向けて開かれており、しかもそれが内部の革新とビジネスの成功につながってきたというのだ。なぜ、そのようなことが可能だったのか。