秋田 喜代美
2020年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2020年07月01日 |
秋田 喜代美 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.125) |
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学校の教育――自発・自律する学び
世界最高の幼児教育
レッジョ・エミリアからいま学ぶこと
「世界で最も優れた10の学校」*に選ばれ、米Googleの社員が利用する預かり保育にも取り入れられるなど、注目を集める幼児教育のレッジョ・エミリア。
イタリアの小さなまちから生まれた、独自の哲学にもとづく保育実践は、単なる幼児向けの教育理論に留まるものではない。
コロナ禍のいまだからこそ、その実践を見つめ直し、あらためて学んでみたい。
* 1991年ニューズウィーク誌
はじめに
レッジョ・エミリアとは
いまアフターコロナ、ポストコロナの教育について議論がなされています。園や学校が閉鎖中の子どもたちの本音を聴いてみると、公教育のなかで、先生が自分たちのことを気にかけ、心を砕いてくれていること、仲間との語らいなど当たり前に思っていた人と人とのつながりの意味や、日々の生活リズムを学校生活がつくっていたことなどが語られます。そのなかで大事なことは、以前の教育に戻ることではなく、この間の経験を踏まえ新たな教育の日常へと挑戦していくことでしょう。
たとえば、対面からオンラインになったことが問題なのではありません。オンライン授業により対話が減り、先生たちからの一方向の情報通信が増え、課題を多く出すことが教師の役割であるかのような教育に対して、子どもたちはそれは違うのではないか、もっと主体的に関わりあう時間を、と声を挙げています。子どもたちは自分たちの声を聴き、そして自分たちの可能性や主体性を引き出し大人も子どもも共に育ちあうネットワークやまち、コミュニティがつくられていく教育がさまざまなツールにより展開していくことを、これからの新常態の教育に期待しています。
「聴くことの教育学」を中核の理念とし、これからの教育にヒントを与えてくれるのが、イタリアのレッジョ・エミリアの教育です。エミリアとあるので、女性の研究者の名前と時に誤解を受けがちですが、これはエミリア地方(レッジョとは地域、州の意味)の教育という意味です。北イタリア、レッジョ・エミリア市の第二次世界大戦後に生まれた乳幼児の保育・教育実践や制度と、その実践を支えてきたローリス・マラグッツィの哲学にもとづく教育実践やまちづくりが、1990年代に北米をはじめ国際的に紹介されるようになり、これからの時代の教育として脚光を浴びるようになりました。