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情報誌CEL

小島 一哉

2021年03月01日

3・11から10年 −レジリエンスを考える

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2021年03月01日

小島 一哉

都市・コミュニティ

コミュニティ・デザイン
まちづくり

情報誌CEL (Vol.127)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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東北地方に甚大な被害を及ぼした東日本大震災発生から10年。2万人もの生命を奪い、町を破壊し尽くした大災害からの復興が進むなか、その記憶を後世への智慧として、未来の人々と共有する動きが本格化している。大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所(CEL)が関わる「レジリ学園」もそのひとつ。ハード面の強靭化のみに頼らない、自然災害へのレジリエンスのあり方とは?

奇跡と悲劇の交錯を通じて
岩手県大槌町の高台に白い電話ボックスがポツンと立っている。手入れの行き届いた個人宅の庭の片隅にある。電話ボックスの中には電話線の切れた黒電話がひとつ。映画の舞台にもなったことでも知られる「風の電話」[*]だ。天国につながる世界で唯一の電話ということで各地から訪れる人が絶えない。
東日本大震災以降、被災地にたびたび足を運んでいる。同じ大槌町のある地区で震災当時、自治会長をされていた長老から話を伺う機会があった。住民の1割以上が亡くなった地区である。「ひとつ救われたことがある。それは若い人が生き残ったことだ」と自身を励ますように言われていたが、「みんな逃げなかったんじゃない。逃げ方が不十分だったんだ」と口惜しく話されたことが強く印象に残っている。
大震災の教訓は枚挙にいとまがない。有名な「釜石の奇跡」と言われる子どもたちの行動は賞賛して受け継いでいかないといけない。一方で釜石市鵜住居地区の「釜石の悲劇」と言われる事案もよく知られている。震災直前に竣工した「地区防災センター」での出来事。海に近く津波避難施設ではなかったが、多くの住民が知らずにそこに避難して、結果200人以上が亡くなった。また、地元の老舗銀行の女川支店に配属された息子さんを亡くされたご夫妻から大変貴重な話をお聞きした。企業の危機管理はどうあるべきなのだろうか。
長時間校庭で児童が待機した小学校。園児を親御さんのもとに届けるために山を下りた幼稚園バス……。いろいろな教訓が残されている。よく言われていることだが「もう少し知識があれば……」と思わずにいられない。もう少し上まで逃げていれば……。避難マニュアルをきちんと作っていれば……。奇跡と悲劇が多面的に交錯しているのが被災地の現状だ。


*もとは、所有者が震災の前年に死去した従兄と話をしたいとの思いで設置。震災後に整備、開放され、「風の電話は心で話します 静かに目を閉じ 耳を澄ましてください 風の音が又は浪の音が 或いは小鳥のさえずりが聞こえたなら あなたの想いを伝えて下さい」とのメッセージとノート1冊が置かれている。

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