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情報誌CEL

池永 寛明

2021年03月01日

私たちが考える万博 第6回 能が教える、日本文化の精神

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媒体(Vol.)

備考

2021年03月01日

池永 寛明

都市・コミュニティ

コミュニティ・デザイン
地域活性化
まちづくり

情報誌CEL (Vol.127)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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世阿弥に学ぶ、コロナ禍の乗り越え方

「私たちが考える万博」も6回目となりました。コロナ禍2年目に入り再度緊急事態宣言が発令される状況のなか、4年先の2025年大阪・関西万博はこれまでの発想では立ちいかなくなるでしょう。前回の繰り返しになりますがコロナ禍は大断層、明治維新、戦後以来の「リセット」です。大阪・関西万博はそうした「リセット」を踏まえ、新たに創造されたものを体現しなくてはならない。つまり私がこれまで「ルネッセ」で提唱してきた、技術と社会をつなぐものが「文化」であるという論点の重要性は、さらに増していると感じています。
前回、世阿弥の『風姿花伝』について少しふれました。なぜ今、世阿弥なのかと問われるのですが、日本文化について考えるなかで、時代を遡っていけばいくほどどうしても能、そしてそれを確立した世阿弥へとたどり着くのです。たとえば日本料理をひもとくとその根源に茶道がある。そして茶道を深掘りすれば、能と切っても切れない関係性が見出される――文化の核心はそこにあるわけです。
千利休による茶道の大成に遡ること約150年、世阿弥の能は当時の時代背景があって生まれた芸術です。南北朝の動乱期を経て室町幕府が政権の安定に至るうねりの時期のなかに生きたからこそ、世阿弥の「夢幻能」[*]は生まれたといえるでしょう。
これまでもコロナ禍後の社会の論点としてリアルとバーチャルの融合をあげてきました。いつしか「リアルかバーチャルか」の二項対立でしか物事が考えられなくなった現代社会にあって、「リアルもバーチャルも」という「時間」と「場」の変革こそが本質にあります。これは空間と時間の制約から解き放たれた夢幻能の形式にすでに見られたものです。あらためて我々は能――世阿弥に学ぶべきではないでしょうか。

初心忘るべからず
大阪・関西万博を考える基本スタンス

少し話が逸れますが、先年10月、大阪のオフィス街に佇む山本能楽堂で、観世流能楽師・山本章弘師との対談が行われました。これまで能楽堂を会場とした講演はあれど、オンライン配信されたのは世界初だったと思います。テーマは「コロナ禍と能」。コロナ禍後の現代社会に能が果たしうる役割を中心に山本師とお話ししましたが、何より能楽堂という場の持つ磁力に興奮したのを覚えています。


*能において霊的存在が登場し、過去を回想する形で物語が 展開する曲。

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