岸 和郎
加茂 みどり
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2021年07月01日 |
岸 和郎 |
住まい・生活 |
住生活 |
情報誌CEL (Vol.128) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
ライフスタイルは日々変わりゆく。さらにコロナ禍の影響もあり、「住まい」は、仕事や遊びも含めた生活を行う場として、重要性が増している。多様なニーズに応えるためには、新たな視点から「住まい」を読み解く必要があるのではないだろうか?
建築家の岸和郎氏は、京都を拠点に古都の街並みにマッチしたモダニズム建築を数多く手がける。
建物のインターフェースの設計を通じたウチとソトの多様な関係性などについて、「大阪ガス実験集合住宅NEXT21」を担当する加茂みどり研究員が幅広く伺った。
電気工学と建築史、幅広い見地での設計
加茂 「住宅のウチとソトをどうつなぐのか?」「家を開くとはどういうことか?」というテーマを考えています。岸先生は、建築家として、住宅のみならず商業ビルや大学、寺院など幅広く手がけられています。独特の世界観をもつ作品において、建物の内外をつなぐインターフェースの設計には、とりわけ工夫を凝らされているように思えます。また東京ではなく、京都を拠点にされていることもあり、住宅は自然や都市といった外部の「環境」だけではなく、歴史や文化とも接点をもつことを強く意識させられます。
今日は広い観点から、住宅を含む建築がこれからの時代にどう外部との関係を構築していくべきなのか、お話を伺いたいと思います。岸先生は大学で建築史を学んだ経歴をもっていらっしゃる。建築史の研究室では、何をテーマにされていたのですか?
岸 生まれは神奈川県横浜市ですが、京都大学に進学しました。大学も最初は電気工学科に進みましたが、これでいいのかなと将来に疑問を感じているときに、ル・コルビュジェと出会います。そこからミース・ファン・デル・ローエを含むモダニズムの建築に魅せられていきました。
当時はポストモダニズムという言葉が使われはじめ、近代的な合理主義がもつ限界が強く意識されるようになった時代です。ロバート・ヴェンチューリ 『建築の複合と対立』といった本を読むと、ミケランジェロが20世紀の建築といわば同列に扱われているのに驚きました。私だけではなく、その頃多くの人が歴史のなかに新たな答えを見出そうとしていたのです。
研究室でよく雑談をしていたのですが、面白かったのは、ルネサンスの建築家に現代日本の建築家を当てはめてみるという遊びです。「パッラーディオは磯崎新さんだよね」とか、「アルベルティなら槇文彦さん」といった具合。そのように考えていると、中東の古代遺跡もルネサンス建築も日本の伝統建築も、いわば等価なものとして、その本質が見えてくるような気がした。