野城 智也
2021年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2021年07月01日 |
野城 智也 |
住まい・生活 |
住生活 |
情報誌CEL (Vol.128) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
いまや、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)は住空間においても、様々なかたちで浸透しはじめており、その領域も省エネルギーやセキュリティといった分野から、住民ひとりひとりの快適や健康管理、家事サービスなど、まさに生活全般へと拡大している。
IoT住宅の現状と将来への展望、求められる条件、産業界全体として取り組むべき課題について、企業横断的な機構「コネクティッドホームアライアンス」の特別顧問も務める第一人者が紹介する。
本稿では、IoTとは「インターネットを介して、モノそれぞれに組み込まれたコンピュータ・システムが互いに結びついて情報を交換し合い、複数のモノを協調的に働かせること」という意味で用いる。1970年代以来、家電など種々の人工物では設置された各種センサーや、小さなコンピュータ・システム(組み込みシステム)により単独で操作・制御する方式が用いられてきた。これに対し、外部のアプリケーション・ソフトウエアからネットワークを介して組み込みシステムに命令を送り、人工物を操作・制御する方式がIoTである。建築・住宅分野では、IoTという用語が普及する以前から、警備システムや、省エネルギーを目指した建築設備の運転制御システム(BEMS:Building Energy Management System)などで、ネットワークを介した機器の操作・制御が行われてきた[*]。これらの例は、住宅・建築分野におけるIoTの先駆例といってよかろう。
住まう人の快適さを学んでいく住宅
では、IoTは、住空間のなかで、どのような可能性を拓きはじめているのであろうか?
その浸透・展開状況を概観してみよう。
1) 人工物の遠隔操作・制御
IoTは、ネットワークを介することによって人がその場にいなくても遠隔で人工物を操作・制御する途を開いている。建築・住宅の警備システムやBEMSはまさに遠隔操作の典型例であるが、最近では外出時に家庭内の機器を操作する手段やサービスが急速に普及している。例えば、外出中に家の中の様子を眺める、宅配便に対応する、帰宅前に風呂をわかしたり、空調機を作動させる、といったことができるアプリケーションがユーザーに提供されている。
注
*そもそもIoTの概念は、既に1987年に坂村健氏がTRON構想において提唱したHFDS(Highly Functionally Distributed System)環境に由来する(出典:Sakamura, Ken. "The Tron Project." IEEE Micro 7.2(1987): 8-14)。