金澤 成子
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2021年07月01日 |
金澤 成子
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住まい・生活 |
住生活 |
情報誌CEL (Vol.128) |
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新型コロナの影響により、住まいの外で遊びや食事を楽しむことが突然難しくなり、ほとんどが家で行われることになりました。さらに、在宅ワークも増えたことで、安らぎや居心地だけを求めていた家は、社会との関係性においても変化が起こっています。
今号では、これまでの常識を覆し、「住まい」と社会の新しい関係性に挑戦する現場の事例を紹介しながら、「住まい」のあり方について考察しました。住まいへの思い込みやこだわりを捨て、外部との関係性から建物のインターフェースを考える建築設計、拡張家族という多様な人々が共同で暮らしながら、「対話」によって価値観を共有し、ひとつの「社会実験」をしている京都下鴨修学館、「まっとうな大家」として住民と地域を長い視野で見守る公民連携のmorinekiプロジェクト、空き家活用とサブスクで多拠点居住を提供し、家や守もりによる地域体験で「人口のシェアリング」と「全国創生」を狙うADDress、住まいの民主化で「家を開き、楽しむ」といった新しい家づくりを追いかけるSUUMOなど。いずれの事例も、供給側の押し付けでなく、住まい手自らが、自律しながら、地域社会と共存できる居心地の良い場所を選択、創造できる仕組みがあります。
在宅ワークの浸透は、地域社会にも大きな影響を及ぼすと思われます。従来、地域の消費者でしかなかった住まい手が、これからは、欲しいものは近隣で自ら製造する生産者にもなり、廃棄・再利用までも自分たちで行うことで、これまでの都市集中型の労働力も、分散化が可能になります。これにより、育児や介護など、供給側の人手不足の課題も、もっと地域社会の互助で解決していけるようになるのではないかと思います。
女性の社会進出や少子高齢化により、単身世帯も増加し、従来の「家族」という単位ではなく、社会とのつながりを意識した、より多様な「住まい」のかたちが必要になると考えます。ニューノーマル時代の「住まい」のあり方は、住まい手が、如何にして、自助の支えとなる、家族のようなつながりのある居心地の良い「社会」を創れるかということではないでしょうか。