上野 千鶴子
遠座 俊明
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2022年03月01日 |
上野 千鶴子 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.130) |
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「長寿社会」の到来、それはとりもなおさず定年後の膨大な時間を、どのように生きていくか、一人ひとりが考えなければならないということでもある。
個人も企業も終身雇用を背景にした「単線的」生き方のみを歩み続け、いざリタイアを迎えても“その先”はどうしたらいいかわからない――そんなことにならないよう、人生の後半をあくまで自分らしく、前向きに歩み続けるには、何を考え、どう身を処していくべきなのだろうか。
歳をとり、たとえ健康を損ない、死と直面しても、動じることのない老い方について、『おひとりさまの老後』シリーズをはじめ高齢社会への鋭い提言をしてこられた社会学者の上野千鶴子さんをお迎えし、遠座俊明研究員が幅広くお話を伺った。
「おひとりさま」の老後が当たり前な時代の到来
遠座 世界でも類のない超高齢社会を迎え、人々は不安を抱えつつも新しい経験を積み重ねています。
しかし長くなった後半の人生を過ごすための仕組みもスキルも、まだまだ足りないのが現状ではないでしょうか。上野さんの『おひとりさまの老後』(法研)が大きな話題となってから、15年が経ちます。この間に日本の高齢者をめぐる何が変わり、また何が変わらなかったと感じておられますか?
上野 まず、「おひとりさま」観が劇的に変わりました。「みじめ」「かわいそう」の代名詞だったのが、数が増えることによって当たり前になりました。もちろん、いやも応もない人口学的な趨勢ですが、同時に人々の意識が変わり、「おひとりさま」を選択できる社会に変わってきた部分も大きい。
刊行当時、「おかあさん、一緒に暮らさない?」という申し出を「悪魔のささやき」と表現するのは、勇気のいることでした。今や、それを口にする子どもはあまりいないし、いたとしても素直に受け入れる親は少ないでしょう。
おもしろいのは、団塊世代の男性が愛読してきたオジサン向け週刊誌が最近、「ひとりになったときに絶対してはいけないこと」といった特集を組むようになり、そこに「子どもとの同居」「家を売って施設に入ること」「再婚」「生前贈与」… など、私がずっと言い続けてきたことばかりがあげられていて(苦笑)。まさに「昨日の非常識は、明日の常識」ですね。
遠座 他方、残念ながら日本は変わっていない、と思われるところはどこでしょうか?