森 剛士
2022年03月01日作成年月日 |
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2022年03月01日 |
森 剛士 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.130) |
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長寿社会では、寿命が延びれば延びるほど病気や体の虚弱化リスクも増える。また、もし寝たきりになってしまえばその介護も長期化する。介護する側、される側どちらの立場になっても多くの不安がつきまとう。そんななか「自立支援型」という新たな介護のかたちが生まれ、多くの成果をあげていることで注目が集まっている。
従来の「お世話型」介護とは異なる考え方と方法論で自立支援型デイサービスを運営するだけでなく、地域や企業と連携し、持続可能な介護ビジネスを次々と展開する「ポラリス」代表取締役・森剛士氏に、自立支援型介護に対する熱い想いや実状について伺った。
医療ではなく介護の世界でリハビリを
2016年頃から介護保険をめぐる議論で、「自立支援」という言葉が大きな焦点となっている。できないことを手伝う「お世話型」から、高齢者が自分でできるように助ける「自立支援」を重視する流れへ、国の政策も大きく舵が切られたのだ。これには、財政問題を解決するための大義名分にすぎないとか、要介護状態の改善を意味するような「自立」は、福祉本来の理念とは違うのではないかといった意見もある。だが政治的な対立や抽象的な議論とは別に、介護現場における「自立支援」はすでに分厚い経験を積み重ね、大きな成果をあげていることも事実。それなら、当事者である高齢者のニーズや希望はどこにあるのか? 現場では一体何が起きているのか? まずはそれを知ることから、始めるべきだろう。心臓外科医から介護の世界に転身し、2002年に宝塚市で自立支援型デイサービス「ポラリス」を創業した森剛士氏に、詳しいお話を伺うことができた。
「リハビリを志したきっかけは、祖母が脳梗塞で倒れたことでした。その時私が見たのは、まだリハビリが必要なのに行き場を失った多くの患者さんたち、今でいう『リハビリ難民』です。
たとえば脳血管障害などの発病直後は、病院で行う急性期リハビリで急速に改善しても、やがて『慢性期』『生活期』などと呼ばれる段階になると、病院から家に帰されて適切なリハビリの機会を失うことがよくある。それで逆に症状が悪化し、寝たきりになってしまうことも珍しくありません」
在宅、もしくは通院しながら行う慢性期リハビリの圧倒的な不足。それこそが、医療から介護の世界へ飛び込んだ森氏の原点だった。「ポラリス」創業の2年前、2000年に京都で設立したのは、この慢性期リハビリテーションに特化したクリニックだった。