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情報誌CEL

秋田 光彦

2022年03月01日

多死の時代、「縁側」としての寺の役割 −弔いのコミュニティが育むもの

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2022年03月01日

秋田 光彦

住まい・生活
都市・コミュニティ

ライフスタイル
コミュニティ・デザイン
地域活性化

情報誌CEL (Vol.130)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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核家族化や高齢独居世帯の増加で従来型の葬儀や墓の維持はいよいよ難しくなり、さらにコロナ禍による葬儀の規模縮小などによって、死と葬送のあり方はかつてない変化に直面している。その一方、近年は若い世代を含め、寺での座禅や写経が静かなブームになるなど、寺院との関わりは葬祭を離れた幅の広さを見せている。
そうしたなか、長寿=多死社会を迎える私たちは、現状とどう向き合い、死生に関する思想と文化をどのように育むべきか。大阪・天王寺の古刹で長年にわたりユニークな活動を続けてきた秋田光彦氏に、これからの葬送や寺の役割をはじめ幅広くお話を伺った。

秋田氏は性格のまったく違うふたつの寺院の住職を務める。ひとつは、470年の歴史を持つ浄土宗大蓮寺。古くからの檀家がいるなか、永代供養墓や納骨堂など「お墓の継承者がいない」と悩む人が多い現代のニーズに合わせたお墓も用意し、本堂では通常の葬儀も可能だ。もうひとつは大蓮寺の塔頭(たっちゅう:寺内寺院)で、江戸時代に創建された應典院。本寺とともに第二次世界大戦中の空襲で灰燼(かいじん)に帰したが、1997年に秋田氏が「葬式をしない寺」として再建した。檀家なし、墓なし、葬儀場なしの應典院は、一般のお寺とはかけ離れた風貌で、現代的な建築物の中に劇場型の本堂やセミナールームを持ち、演劇や美術展、トークショーやワークショップなど、年に大小100以上のイベントが開かれてきた。
伝統寺院である大蓮寺で壮年や高齢期の人々に弔いの場を提供し、新しき寺としての應典院で若い芸術家たちと密に交流してきた秋田氏は、多死社会が到来し、コロナ禍を迎えた現代の葬送について、何を感じているのか。

コロナ禍を経て、葬儀は4.0の段階へ

「コロナ禍の2年は、寺院と弔いの視点から捉えて、3つのフェーズに分けられると思います」と秋田氏は言う。
「ウイルスの正体が不明で対処のしかたもわからなかった初めの頃は、とにかく生存することが大切という時期が続き、病院にも足を運べなければ親の死に目にも会えず、火葬にも立ち会えないといった例が多くありました。死者と遺族の権利が蹂躙(じゅうりん)され、いわば『剥むき出しの生』[*1]があらわになったのが第1のフェーズといえるでしょう。これと歩調を合わせ、寺院も人々の暮らしと断絶していきました」

[*1]イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンの言葉。「ビオス(社会的・政治的な生)」を奪われ、「ゾーエー(生物的な生)」しか持たない状態のこと。

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