三原 岳
2022年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2022年03月01日 |
三原 岳 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.130) |
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複数の疾患を持つ高齢者が多くなる超高齢社会。
これからの医療には病気を「治す」だけでなく、暮らしを「支える」ことが求められる。
こうした医療は「プライマリ・ケア」と呼ばれ、イギリスなどの医療制度改革で多く採用されている。
日本のプライマリ・ケア事情を考えるとともに、今後の可能性を考察する。
超高齢社会で求められる医療
「治す」医療から「治し、支える医療」へ――。
現在の制度改正の流れを作った政府の社会保障制度改革国民会議が2013年8月に公表した報告書では、こうした文言が盛り込まれている。つまり、病院を中心に病気の治癒や社会復帰に力点を置く医療だけでなく、自宅を中心に生活を支える医療を重視する考え方であり、前者は一般的に「医学モデル」、後者は「生活モデル」と呼ばれる。
両者の主な対比は図1:医学モデルと生活モデルの対比に示す通りである。まず、医学モデルとは従来型の医療であり、多くの人が想起する医療のイメージに近い。具体的には、病院を中心に医師がヒエラルキーのトップに座り、医師の指示の下で看護師などの専門職が動く医療であり、病気の治癒や救命が強く意識される。
これに対し、生活モデルはコミュニティを中心にしつつ、医師などの専門職が連携して療養生活を支援する医療であり、複数の疾患を持つ高齢者が多くなる今後の日本で求められる発想である。こうした医療に適しているのがプライマリ・ケアである。
日本プライマリ・ケア連合学会[*1]によると、プライマリ・ケアは「国民のあらゆる健康上の問題、疾病に対し、総合的・継続的、そして全人的に対応する地域の保健医療福祉機能」を意味しており、特徴は図2:プライマリ・ケアの特徴の通り、「近接性(Accessibility )」「包括性(Comprehensiveness)」「協調性(Coordination)」「継続性(Continuity)」「責任性(Accountability)」という5つで整理されている。
このうち、近接性は医療サービスに対するアクセスの良さを意味しており、包括性は臓器・疾病別ではなく、全人的に様々な健康課題に対応できる点を表す。協調性は多職種連携などチーム医療、継続性は医療・福祉・保健を切れ目なく提供する特性、責任性は患者への意思疎通などをそれぞれ意味する。
プライマリ・ケアの実践例を考えると…
[*1]日本プライマリ・ケア連合学会ウェブサイトを参照。http://www.primary-care.or.jp/paramedic/