金澤 成子
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2022年09月01日 |
金澤 成子
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エネルギー・環境 |
エネルギー・ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.131) |
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環境破壊、格差拡大、パンデミックの進行、そしてウクライナ情勢による地政学的リスクの高まりなど、国際社会が多くの苦難に直面するなか、持続可能な社会を切望する世界的な動きは止まることがない。にもかかわらず、日本は危機感の欠如からか、特に脱炭素経営については先進国の中でも大きな後れをとっている。こうした状況のなか、私たちはどのように考え、行動していくべきなのか、様々な分野で活躍する方々のお話をお聞きしました。
飛騨古川の伝統職人に若いクリエイターのアイディアを持ち込み、互いに学ぶことで未来の可能性を見出す機会を提供する、実業家の林千晶氏。「新しい変化を阻害するのは“かつての成功者”、革新をもたらすのは“前向きな逸脱者”」という言葉が印象的でした。京都大学で開発された「プラ・イドチャート」は、プラスチックに関する意識・行動の可視化により、消費者・生産者・行政の対立しがちな関係性を、「共創」の第一歩まで近づけています。伝統産業の後継者不足を目の当たりにし、その価値を再定義することで、世界に誇るブランドを確立したシーラカンス食堂の小林新也氏。今は自ら里山再生で、人と自然が循環・育成される場づくりにも挑戦しています。
取材で訪れた飛騨古川では“ふるさと”の風景に魅せられ、「こうと(質素で上品)」な暮らしに満足する町民のココロの豊かさにふれると、「モノからコトへ、コトからココロへ」と価値観が変わりつつあることに気づかされます。車道を作らず、道路全体を歩ける道にしたり、町のシンボルでもある鯉が泳ぐ瀬戸川を町民総出で掃除したりする。古川は、観光客の誘致ではなく「暮らす町」にこだわり、町民の結びつきを大切にしています。そこには、町づくりを通じて人をつくり、ココロをつなぐことを何より重視する価値観があり、持続可能な未来へのヒントがあるように思いました。
31年前にCELが報告した「ジオカタストロフィ」は人類の滅亡を回避する方策を提示したのではなく、99年先、自分の孫の孫の世代に地球規模で起こりうる破局を、同一地平の自分ごととして捉え、大胆に考え方を変えることを意図しました。幸せな未来を描き、そこに向けて、自分が何をすべきで、何ができるのか。まずは身のまわりから見直すことで、持続可能な未来への第一歩を踏み出せるのではないでしょうか。