雄谷 良成
2023年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2023年03月01日 |
雄谷 良成 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.132) |
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地域空洞化の象徴とされる空き家・空き地は、一方で再生への「資源」となり得る。
その可能性を大きく花開かせているのが、石川県白山市に本部を置く社会福祉法人佛子園の活動だ。
無住の寺のリノベーションや、市街地の金沢・人口減の進む輪島の遊休不動産を活用した施設で、障がい者就労、高齢者介護、子育て支援や住民交流など、多様な課題への複合的対処を通じ、福祉と地方創生一体の豊かな変化をもたらしている。
核となる「ごちゃまぜ」の理念をはじめ、空き家・空き地を拠点としたまちづくりについて、同法人の理事長を務める雄谷良成氏に幅広くお話をしていただいた。
――福祉を核として、地域の人にとって居心地のよい場所を生み出し、活気あるまちづくりを実現させている社会福祉法人佛子園のソーシャルイノベーションに注目が集まっています。現在に至る、雄谷さんの活動の原点からお話しください。
雄谷 私自身、祖父・雄谷本英が1960年に開いた知的障がい児入所施設(石川県白山市)で、園児らと寝食を共にしながら育ちました。住職でもあった祖父が、戦災孤児や知的障がい児を寺で預かったのがその始まりです。当時、日本の社会はどんどん豊かになり、大量消費の時代へ突き進んでいましたが、昔ながらの大部屋での生活はプライバシーも自由もないもので、当時は私もそれが当たり前と思っていました。でも、学校に上がる頃からは、少しずつ障がい児と自分を隔てる壁や矛盾にも気づきましたし、そこで暮らす「当事者」としてのモヤモヤも感じるようになります。そのあたりに、現在の自分につながるきっかけがあったとは言えるでしょう。
――大学では福祉や教育を学ばれ、卒業後に青年海外協力隊としてドミニカ共和国に赴任されました。どのような動機から、何を学び、体験されたのでしょう?
雄谷 大学では既存の理論中心のカリキュラムに物足りなさを感じました。そんな時に開発途上国で障がい者教育の指導者を育成するプログラムを見つけ、より生活に密着した体験ができるのではと感じたんです。実際に暮らしてみると、当時のドミニカ共和国は技術や制度もキャッチアップ段階で、差別的な言動もあり、人権意識も高いとは言えません。しかし、住民が寄り添って助け合いながら暮らす点に学ぶべきところも多く、いい意味でゆるい「ラテン的」な幸せ観に目を開かされました。