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情報誌CEL

勝部 麗子

2023年03月01日

まちの小さな農園がもたらすシニア男性の居場所と役割  ー豊中市社会福祉協議会「豊中あぐり」プロジェクト

作成年月日

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2023年03月01日

勝部 麗子

都市・コミュニティ
住まい・生活

コミュニティ・デザイン
まちづくり
食生活

情報誌CEL (Vol.132)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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高齢世帯や単身世帯が多数を占め、ひとり親世帯も急増するなか、地域では子どもの貧困や中高年の引きこもりなど、周囲が察知しにくい社会的孤立も進行している。そうした多様な課題解決に対し、期待されるのが住民相互の支え合いによる新たな地域の編み直しと、拠点としての空き地・空き家の活用だ。
そんななか、大阪府豊中市で展開する「豊中あぐり」は、空き地を利用した都市型農園事業により、居場所のない退職後のシニア男性の社会参加を促進。それを核に、重層的で力強くユニークなソーシャルデザインが注目を集めている。同事業の中心を担う豊中市社会福祉協議会の勝部麗子さんにお話を伺った


地方なら当たり前のように存在する畑や田んぼも、都市部では希少だ。千里ニュータウンに代表される団地、マンション、社宅や一戸建て住宅など、宅地化が早く進んだ大阪北部のベッドタウンである豊中市はその典型だろう。ここでは、土をいじり、そのにおいを日常的に嗅ぎながら暮らす「贅沢」は、誰もが味わえるものではない。毎朝電車で都会に通勤するライフスタイルを終えたシニア男性の多くも、土とは無縁の人生を送ってきた。

「豊中あぐり」プロジェクトは、そんな60歳以上のシニア男性のみ約150人を会員とする。
同プロジェクトにとって最初の農園である「岡町菜園(380m2)」を訪れた印象は、宅地に囲まれたちょっとしたオアシスといったところ。
農地や畑というより、むしろ都会的な公園のような印象だ。白菜や大根、人参、レタスといった野菜が収穫を待ち、芽を出したホウレンソウの鮮やかな色も美しい。畝うねのまわりをレンガで敷き詰めた「ユニバーサル農園」のスマートで明るいスタイリッシュな景観もあり、集う人びとの様子に「農作業」の重さやしんどさはない。といって、老いて土と向き合う孤独な時間かというと、それとも違う和気藹々とした楽しさにあふれている。

「廃棄されるレンガ約6000個をもらい、半年かけて敷き詰めました。車椅子の方や、小さな子どもでも農作業に参加できるんです。これだけの人数で手をかけ、肥料には学校などから出た生ゴミ由来の堆肥をたっぷり使う。ものすごく贅沢で、過保護な畑ですよね」

そう笑顔で説明されるのは「豊中あぐり」の生みの親である勝部麗子さん。農園ができた2016年まで、ここは阪神・淡路大震災で被害を受けた建物が取り壊された後、二十数年も放置されてきた土地だったという。

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