松原 永季
2023年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2023年03月01日 |
松原 永季 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.132) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
昔ながらの細い路地や古い建物を残しつつ、災害に強いまちをつくる。一見、相反するように思われる2つの課題を、住民主体のまちづくりによって解決しているのが神戸市長田区駒ヶ林の事例だ。そして、地域にある空き家や空き地が、芸術・福祉などの拠点となることで、まちに新しい風を吹き込んでいるという。
住宅密集地の下町に、高齢者、アーティスト、障がい者、外国人など、文化的背景の異なる人々が共生する特異なコミュニティはどのように醸成されたのか。駒ヶ林のまちづくりに深く関わり、自身もまちの空き家を設計事務所や喫茶店として再生・活用する、スタヂオ・カタリストの松原永季氏にお話を伺った。
神戸市長田区の海沿いに位置する駒ヶ林は、1000年以上つづいた漁港や浜を起源とする下町である。約1500世帯が暮らすまちの細い路地に一歩入ると、ふと誰かの家の庭先に迷い込んでしまったような感覚を覚える。通路でありながら、生活の場でもある。車の入れない迷路のような道は、かつて子どもたちにとっては格好の遊び場でもあっただろう。頭上には洗濯物を干すための小さなスペースがあり、そして足下には住民の生活を潤す鉢植えがたくさん並んでいる。
大規模な再開発や区画整理が進まなかったため、古きよきコミュニティの記憶を残しながらも人口減少や高齢化に直面することになった駒ヶ林は、空き家や空き地をはじめ、日本の都市部に共通する多くの問題を早くから抱えていた。ところが今、そこに住民たちも想像していなかったような変化が生まれているという。若いアーティストが空き家の利用をきっかけとしてまちづくりに参加し、防災や福祉の課題にもつぎつぎと化学変化を起こしつつあるのだ。小さな路地のまちに何が起きていて、それはどんな行動をきっかけに、どんな土壌から生まれたのだろうか? スタヂオ・カタリストの松原永季氏に詳しくお話を伺った。場所は、駒ヶ林の路地裏にたたずむ古民家を利用した、喫茶店を併設する松原氏の設計事務所である。
「2002年から駒ヶ林でまちづくりに関わるなかで、十数年も空き家になっていたこの場所の元オーナーさんと知り合って、購入させていただきました。