祐成 保志
2023年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2023年03月01日 |
祐成 保志 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.132) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
健康的で安全な住まいに「住む」ということは、人間の生存にとって最も基本的な条件のひとつだ。しかし、現実には最低限の住環境を得ることのできない、いわゆる「住宅弱者」が存在する。その意味で、空き家など既存住宅の活用は、それ自体が社会課題の解決につながる重要な施策と言えるだろう。一方、築年数の古い空き家の場合、そのままでは性能が不十分であり、健康な生活を営むには問題も多い。本稿ではハウジングの観点から、既存住宅の断熱性向上がもたらす「燃料貧困」の解消、さらに地球規模の環境問題であるCO2削減という、ふたつの面での社会的効用について考察する。
住宅の満足感と空き家の関係
国土交通省が5年ごとに実施している「住生活総合調査」には、住宅についての評価(満足感)をたずねる項目がある。これまでの回答の推移を見ると、住宅に対する満足感が上昇してきたことがわかる。肯定的な評価(「満足」と「まあ満足」の合計)は、1988年には47.6%であり、否定的な評価(「多少不満」と「非常に不満」の合計)よりも少なかった。その後もしばらくは否定的な評価と肯定的な評価が拮抗していたが、2003年からは肯定的な評価が優勢となった。最新の2018年の調査では、肯定的な評価は76.3%で過去最高であった。(*1)。
住宅の主観的な評価については慎重な分析が必要である。住宅の質は性能、快適性、立地、価格などが絡まり合っている。そして、評価は回答者の属性、ライフスタイル、価値観の影響を受ける。私たちの多くがコロナ禍で経験したように、同じ住宅に住んでいたとしても、ライフスタイルが変わればその評価は一変する。とはいえ、住宅の質が悪化もしくは停滞していたならば、満足感が一貫して上昇することはなかっただろう。この30年間は、消費者にとって悪くない時代だったのかもしれない。
一方で、1988年に394万戸だった空き家は、2018年には849万戸に倍増した。
(*1)国土交通省住宅局『平成30年住生活総合調査結果』(2020年8月7日)42頁https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001358448.pdf