弘本 由香里
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2023年03月01日 |
弘本 由香里
|
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.132) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
90年代から2000年代へ、
“失われた30年”の始まり
『CEL』を振り返ることは、“失われた30年”と呼ばれた時代を振り返ることにつながる。世界では1992年のリオサミット(国連環境開発会議)で、持続可能な発展に向けたパラダイムシフトの必要性が示され、日本では1995年の阪神・淡路大震災が行政頼みの防災の限界と民間非営利セクター(NPO)の存在価値を照らし出した。また、日本の高齢化率は、1994年に14%を超えて高齢社会を迎えたとされ、2000年以降に導入される介護保険や社会保障の改革等の動きにつながっていく。さらに、1999年から2010年にかけて、平成の大合併も進められていった。
1997年から2000年にかけては、金融機関の破綻と再編の動きも相次ぎ、いわゆるリストラ(人員整理)の波が広がった。バブル崩壊後の90年代から2000年代、20歳前後で厳しい雇用環境に直面した世代は就職氷河期世代とされ、いまだ不安定な立場に置かれている人が多い。2000年代前半、こうした社会背景のなかで、格差問題も浮き彫りにされていく。また、年金制度を揺るがす問題の発覚や、ネット社会の新たな犯罪の登場など、さまざまな生活リスクとそれに伴う不安が膨らんでいく状況があった。
2005年にスタートしたCEL生活意識調査
そうした社会潮流を背景に、2005年1〜2月にかけて、CELは「これからの住まいとライフスタイルに関する生活意識調査」(以下、CEL生活意識調査)を行った。目的は「生活者が抱える現在の問題、期待する姿・方向、そのギャップを埋める解決策、今後のあり方などを分析・研究するために」とされている。当時「エネルギー」「環境」「都市」「住まい・生活」の4つの研究領域で、研究活動に取り組んでいた研究員が、それぞれの問題意識を持ち寄って設問を組み立てた。
当初から参加した立場としては、CELが草創期から大切にしている、生活者視点、長期的視野、多分野横断といった研究方針を活かし、持続可能な社会に向けてパラダイムシフトが求められているなか、果たして生活者はどのような意識を持っているのかに迫り、生活者が直面している課題を乗り越えていくには、どのような意識変容・行動変容が必要なのか、それはどうすれば可能になるのか、その手がかりを得ることができればとの思いがあった。