金澤 成子
作成年月日 |
執筆者名 |
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2023年03月01日 |
金澤 成子
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都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.132) |
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少子高齢化など人口減少に伴う社会システムの行きづまりや昨今の新型コロナウイルスの感染拡大のなかで、孤立や分断を乗り越えるため、「共助」の視点を暮らしに取り入れることが見つめ直されてきています。今号では、空き家・空き地を活用し、地域創生も実現した先進事例を取り上げました。
障がい者就労、高齢者介護、子育て支援など多様な課題に挑み、制度の縦割りを超え、誰もが活躍する共生のまちを実現した佛子園理事長の雄谷良成氏のお話からは、「ごちゃまぜ」に人が集まることで、新しい絆や活力が育まれ、地域の新たな可能性が拓かれることを実感しました。空き地を活用した農園を通じて、シニア男性たちの居場所と役割を創出したコミュニティソーシャルワーカーの勝部麗子氏からは、コモンズ(共同空間)を通じて、人と人をつなげ、あらためて社会を結び直すことの意義を教えられました。高齢化が進む団地の空き室を、障がい者就労による食堂に再生したチュラキューブの中川悠氏の対談からは、ソーシャルビジネスの「かけ算」で、まちの「すき間」に新たな未来を見出す取り組みに、無限の可能性と企業の参画の必要性を考えさせられました。
目の前にある課題を解決すると同時に、どのような社会にしたいのかを考え、その実現のために人々を動かすプロジェクトを作り出すことは、地域のステークホルダーとの合意形成も含め、決して容易ではありません。駒ヶ林の空き家を活用した多文化共生のまちづくりの原動力には、インクルージョン(包摂)&インキュベーション(支援)というコミュニティの地力がありました。その地力を活かすうえで、地域住民が、他者を受け入れ、自分事としてまちづくりに参画するきっかけとなる「空き家・空き地」の存在も重要な資源といえます。デジタル化の進展などで生活環境も大きく変わり、コミュニティへの帰属意識やコミュニケーションが希薄になるなか、あえて「つながり」を生む社会に変えていく必要があると思います。そのためにも、困窮世帯の居住の安定を含め、未来を育むコモンズを創り出すソーシャルデザインへの不断の挑戦は、人口減少時代の関頭に立つ私たちの使命ではないでしょうか。