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情報誌CEL

露木 恵美子

2023年09月01日

対話を通じて、創造的な〈場〉を生み出す −「職場の現象学」で考える人と組織のあり方

作成年月日

執筆者名

研究領域

カテゴリー

媒体(Vol.)

備考

2023年09月01日

露木 恵美子

都市・コミュニティ
住まい・生活

その他
地域活性化

情報誌CEL (Vol.133)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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「失われた30年」と、それに続くコロナ禍で顕在化した「人と組織」の機能不全は、どうすれば解消することができるだろうか。
個々の問題を解決しようとする前に、問題の捉え方自体を見直すことが必要ではないか。
現代哲学の柱のひとつである「現象学」を用いて日本の組織=職場のあり方を研究し、「共に働くこと」の意味を問い続ける、中央大学大学院教授の露木恵美子さんにお話を伺った。


――コロナ禍を脱しつつある日本の職場で、とりわけコミュニケーションの問題が浮き彫りになっています。どのようにご覧になっておられるかお聞かせください。

露木  先日、およそ5年ぶりにヨーロッパを訪れ、人や街がすごく「動いている」という強い印象を受けました。日本もコロナ禍を経て動き出しているところもありますが、まだおっかなびっくり。どこか3年間の「停止」していた状態から、抜けきれていない感じです。それは、より長期的な視点から、失われた20年とも30年ともいわれる時期に日本がやってきたこと、こなかったことの結果であると考えています。
すなわち、バブルの後始末をしながら効率を追求し、「グローバル化」の名のもとに欧米的な考え方を経営に取り入れてきた。一方でやってこなかったのは、足下を見つめるという点でしょう。自分たちの特徴は何か。どう生かしていくべきか。「脱亜入欧」的な考え方で組織や人と人の関係が壊れてしまっているのに、それをメンテナンスするのを忘れてきました。

――コミュニケーションをオンライン化することのメリットやデメリットをめぐる見方は割れており、そこには混乱も見られます。

露木  コロナ禍で在宅勤務が始まると、多くの人が「これで嫌な上司と会わなくていい」などと喜び、「ひとりでも仕事はできるじゃないか」と極端な方向へ振れてしまいました。一方で企業の視点も業務の効率化、たとえばオフィスの賃借料を削減すれば損益分岐点も下がるだろうといった点ばかり。働く人の能力を引き出したり、新しいものを生み出す場所をつくろうといった発想がありませんでした。
ある企業の幹部から「働き方改革を進めているのに、なぜ新しいものが生まれないのでしょうか」という疑問が寄せられました。この問いは、よく考えるとおかしい。働き方改革は、必ずしも新しいものを生むためのものではありません。さまざまな事情を抱えた個人に合った、働きやすい環境をつくることは大切ですが、それと企業が存続していくために必要な新しいものを生み出すための投資は、別のところにあるはずです。

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