兼清 俊光
2023年09月01日作成年月日 |
執筆者名 |
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2023年09月01日 |
兼清 俊光 |
都市・コミュニティ |
その他 |
情報誌CEL (Vol.133) |
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精神療法の「オープンダイアローグ」をきっかけに、今あらためて注目される「対話」の力。ビジネス分野でも、対話を重視した人材開発や組織変革の方法論は、世界の先端企業で採り入れられている。日本で同分野をリードしてきたのが1985年創設の株式会社ヒューマンバリューだ。ビジネスで力を発揮するオープンな対話とはどんなものか。
現場ではどのように導入されているのか。
数多くのコンサルティングを行い、組織開発の理論や潮流にも精通する代表取締役社長の兼清俊光氏にお話を伺った。
関係の質を高め「成功の循環」を引き起こす原動力としての対話
「私たちが行うさまざまなセッションやミーティングでは、必ず最初に"チェックイン"を行います。ひとりひと言ずつ、『今の正直な気持ち』や『気になっていること』を、順番は決めず1分程度で話し、質問や突っ込みはなしで全員が話し終えるまで続ける。同じように、最後は"チェックアウト"で終わります」
兼清氏の言葉を受けて、今回の取材も参加者全員が「正直な気持ち」を話す実践的なスタイルで始まった。相手の話にどう反応し何を話すべきかばかり考えていると、一番の基本である「聴くこと」が疎かになってしまう。その点で「質問、突っ込みなし」の原則が場に良い影響を与えているのを実感し、「対話」についての取材に心の準備ができた気がする。
「対話によってチームがもっている①関係の質を高めることが、②思考の質を高め、③行動の質を高め、④結果の質を高める。それが無限にループしていくのが、組織開発における『成功の循環』です。チェックインによって自分の気持ちにアクセスし、聴く人とそれを共有する。そうすることで思考の質も高まっていく。1分間で語られることは小さくても、原動力として重要な意味をもっているのです」
兼清氏が対話を通じて重視するのは、チーム全体がもつ関係の質だ。
「たとえば心配性の人でも、この仲間となら大丈夫と感じられる。あるいは逆に、すごく有能な人でもうまく力を発揮できないようなチームもあり、それはいずれも集合的な思考の質であり、場の力と言い換えてもいいでしょう」