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情報誌CEL

高木 俊介

2023年09月01日

対話で劇的に変わる精神医療と多職種連携 −オープンダイアローグと未来語りのダイアローグ

作成年月日

執筆者名

研究領域

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媒体(Vol.)

備考

2023年09月01日

高木 俊介

都市・コミュニティ
住まい・生活

その他
地域活性化

情報誌CEL (Vol.133)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。

近年、世界の精神医療の現場で注目を集める「オープンダイアローグ」。
北欧フィンランドで生まれたこの精神療法は、治療者が当事者(患者)とそのネットワークを含めて「対話」することにより、薬物に過度に頼らず急性期の症状から回復することから、大きな期待が寄せられている。
一方、精神医療を超えた多様な対人支援の場に「対話」を導入することで、行き詰まった状況を打開し、多職種の連携をはかるのが、同じくフィンランド生まれの「未来語りのダイアローグ」である。
対人支援のふたつのダイアローグがもたらす変化について、この手法をわが国へ紹介した第一人者である高木俊介氏がつぶさに語る。


日本の精神医療に対する疑問がダイアローグとの出会いを生んだ

日本は全病床数約168万床のうち5分の1の約34万床が精神科のベッドという「精神病院大国」です。精神医療の脱施設化が世界的な流れとなっているなかで、日本だけは高度経済成長期から病床数が減ることがなく、世界1位という不名誉を誇っています。

理由は、経済が成長するのに伴い女性の労働力を確保するため、共同体のなかで主に女性が中心となって世話をしていたさまざまな障害者を病院や施設に収容し、世間から隔離したからです。それでも身体障害と知的障害の場合、高度経済成長期が終わり、親の生活インフラがある程度整うと、施設に入れた人を家に戻そうという動きが始まったし、施設で過ごしている間に失った能力をどうやって回復したらいいかという取り組みを、社会ぐるみでやってきました。

ところが、精神の障害だけはそうならなかった。というのも、統合失調症は20歳前後から30歳頃までに発症する人が多く、20年施設に収容されるとすでに40歳以上になっています。その親となれば多くが70歳以上と高齢で、そうなると、家族からは地域に戻していくための社会的な運動が起こってきません。ほかの障害以上に差別や偏見も多いですから、なおさら声が上がらない。高度経済成長期に病院や施設などモノをつくることで国の財源を使い果たした今、もはや国の施策頼みでは収容していた精神障害者を社会に戻すことができず、彼らの居場所がないままになっているわけです。

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