弘本 由香里
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2023年09月01日 |
弘本 由香里
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都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.133) |
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日本の各地でシャッター商店街化が進んでいる一方、マルシェ型イベント等に象徴される活動とともに、ストック活用やコミュニティ再生へと踏み出していく商店街もある。大阪市大正区での実践検証を踏まえ、各地の特徴的な取り組みに学び、地域資源としての商店街の今後へ、12のキーファクターを示す。
はじめに:社会の変化と商店街
日本の近代化は、明治・大正・昭和初期にかけて、極めて急速に進められていった。そのため、工業化する都市への急激な人口集中が起きた。また、第二次世界大戦後の戦災復興とそれに続く高度経済成長も、同様に都市部への激しい人口移動を伴った。
このふたつのピークを持つ都市への過剰な人口移動は、さまざまな歪みも抱えていた。ともあれ、密集する人々の暮らしを支えるために、数多くの小規模小売業者が生まれ、大小さまざまな商店街が各地に形成されていった。
高度経済成長期には大いに活況を呈した商店街だが、やがて、消費生活や交通事情の変化、流通改革や規制緩和による地域開発等の荒波を受けて苦境に至り、目下、高齢化や人口減少や地域産業の衰退といった社会構造の変化の只中にある。個店の事業承継はままならず、シャッター商店街化が進んでいる例が少なくない。
筆者が理事を務める、一般社団法人大正・港エリア空き家活用協議会( 愛称:WeCompass、代表理事:川幡祐子)の地元、大阪市湾岸部の大正区・港区も、近代から戦後の高度経済成長期にかけて、大阪の発展を支えた工場が集積し、労働者のための住宅が大量に供給され人口も急増した。しかし、近年は人口減少や高齢化が顕著で空き家も増加。かつて工場労働者で賑わった、市内屈指の歴史を持つ商店街のひとつ、大正区の三泉商店街も、多くの店舗がシャッターを下ろした状態である。
一方、各地の商店街に目を向けてみると、同様に厳しい社会環境に置かれながらも、マルシェ型イベント等に象徴される活発な活動を展開し、空き店舗・空き家等の活用からエリアリノベーションを目指す取り組みも見られる。
WeCompassでも、2019年から2022年にかけて、京都大学大学院工学研究科三浦研究室や地域の方々と協働し、大阪市大正区の三泉商店街をフィールドに、空き店舗・空き家活用を目的としたマルシェ型イベントを試みた。