金澤 成子
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2023年09月01日 |
金澤 成子
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情報誌CEL (Vol.133) |
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精神療法の「オープンダイアローグ」の進展と軌を一にして、ビジネス分野でも対話を重視した人材開発や組織変革の方法論が世界の先端企業で採用されている。今号では、精神療法が重視してきた「対話」のポテンシャルに注目し、対話を通じて人と組織が変わる先進事例を取り上げた。
中央大学の露木教授は、創造的な組織づくりに必要なものは、傾聴と対話と実践、この3つに尽きるとし、AIでは不可能な「学びなおし」など、現場での探究的な対話からの実践が共創を生み出すとした。ソリューションフォーカスの青木氏は、人が響き合う「場」の創造を支援するなかで、OKメッセージをたくさん出すことが重要とした。精神科医の高木氏は、精神医療に「対話」を導入することで、薬物を用いなくても急性期の症状から回復することを日本へ紹介した第一人者であり、多様な対人支援の場でも対話後に参加者は「狐につままれたような不思議な爽やかさ」を感じるという言葉は印象的だった。ヒューマンバリューの兼清氏は、対話は関係の質を高め「成功の循環」を引き起こす原動力とし、イノベーションを生み出し続ける「生成的変革アプローチ」を提唱した。
過去に自治体の業務効率化や企業のサービス開発などを支援したことがあるが、最後に突き当たるのは実践する組織の問題であった。「問題志向」の診断型アプローチは、自組織の状態を可視化し、論理的・合理的に経営層を説得するには効果的であるが、変革をやらせる側とやらされる側に分断し、施策と現場の状況が不適合を起こすなど、期待する成果につながらないこともある。「解決志向」の対話型アプローチでは、やらせる側・やらされる側という垣根がなくなり、傾聴と共感で、人々の内側にある想いから取り組みが生まれてくるので、モチベーションも高まり、変革が継続しやすくなる。
ChatGPTのような対話型AIの出現で、既存知の活用は著しく効率的になったが、不確実性、複雑性、多様性が高まる現在や未来において、人と組織を変革へ導くためには、生身の人と人の真の「対話」によって生み出される未知のエネルギーやモチベーションこそが、必要不可欠ではないかと思う。