薬袋 奈美子
2024年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2024年03月01日 |
薬袋 奈美子 |
都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.134) |
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欧州のボンエルフとは「子どもが遊んでも良い道」を実現させるための交通ルールの名称であり、またそのための規制・対策を施したエリアを指す。
ウォーカブルの取り組みが市街地の中心部や商店街を中心とするなか、生活道路を"Place(場)"とするボンエルフを日本へ導入することが子どもや高齢者を含む、人優先のまちづくりにつながると薬袋奈美子氏は訴える。
遊んでも立ち話をしても良い道
皆さんは図1のような交通標識を見かけたら、どのような意味がある道だと感じますか? これはベルギーにあるWoonerf(ボンエルフ/ヴォンエルフ 生活の庭の意)という名称の交通ルールを示すもので、"人が道の真ん中、つまり車道部分を歩いたり、子どもがそこで遊んでいるかもしれないから、車はゆっくり気を付けて走行せよ"という意味なのです。ここ数年、指定される道が増えているのですが、最初に導入されたのは1978年で、既に40年以上経ちます。
このような交通ルールは、もともとオランダで子どもの交通事故を減らす目的で設けられました。1970年代から80年代の自動車保有率の上昇とともに、交通事故が増え、街中が車に占拠された状態を憂いて、導入が広がりました。その導入例を紹介します。ヨーロッパ諸国が中心ですが、先日はモンゴル共和国でも見かけました。国ごとに、呼び方も詳細なルールも異なりますが、基本的な考え方はほぼ同じで、歩車共存・人優先の交通ルールが設けられているのです。
日本でボンエルフというと、一般的には、道の一部を狭めたり(狭窄)、ハンプ(路上の凸凹)を設ける等、車の走行速度を抑制する装置を指します。しかし、もともとは交通ルールの名称であり、その実効性を高めるために用いられたデバイス(装置)が日本では取り入れられたようです。
今、私の研究室では、日本でもこのような交通ルールを導入することができないだろうかと模索しています。道で遊んでいたり、友達とお喋りしながら広がって歩いたり、親子で手をつないで歩いていて、車にクラクションを鳴らされたことはありませんか?これでは到底インクルーシブな社会とは思えません。