馬場 正尊
小西 久美子
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
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2024年03月01日 |
馬場 正尊 |
都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.134) |
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ウォーカブルといっても、その捉え方や方向性はさまざまで、特に大都市と地方都市ではその意味合いも変わってくる。
では、その取り組みの本質はどこにあるのだろうか。
株式会社オープン・エー代表で建築家の馬場正尊さんは、「ウォーカブル」の仕掛人のひとりでもあり、公共空間の新しい活用について広く発信を行ってきた。
本特集の締めくくりとして馬場さんをお迎えし、ウォーカブルの本質を問うことでこれから日本が目指すべき、まちづくりのあり方を考えたい。
「ウォーカブル」は目的ではなく都市の生産性を上げる手段のひとつ
小西 エネルギー・文化研究所(CEL)の所員で「ウォーカブル」について議論したところ、人によって捉え方がさまざまであることがわかりました。馬場さんは、国土交通省(国交省)が掲げる「まちなかウォーカブル推進事業」のきっかけとなった「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」の副座長も務められた、まさに「ウォーカブル」の仕掛人ですので、ぜひその本質的なお話を伺いたいと思いました。
馬場 あの会は通称「ダイバー懇(ダイバーシティ懇談会)」と呼んでいて、国交省のなかでもかなり画期的でくだけた委員会でした。普通、委員会というと、都市計画や建築など各学会の先生方が揃うなかで議論がされますが、より自由で多様な意見が出しやすい懇談会というかたちにしたのが国交省側のこだわりでもありました。
小西 2019年にその懇談会が開かれてから政策化、法改正がいっきに進み、「ウォーカブル」という言葉も急激に広がりました。ただ、今はまだ表面的なところだけが取り上げられがちです。その背景や根っことなる部分について、まず教えていただけますか。
馬場 最初はウォーカブル、つまり歩くことがテーマではありませんでした。当時の国交省都市局の局長は次の年に向けてのテーマを探していて、その会話のなかで、「日本は経済成長面では停滞しているようにみえる。今後、国際競争のなかで日本の都市が生産性を上げ、勝ち残っていくためには、どうしたらいいのだろう」という議論になりました。その時にリチャード・フロリダの『新クリエイティブ資本論』の話が出たんです。