金澤 成子
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2024年03月01日 |
金澤 成子
|
都市・コミュニティ |
まちづくり |
情報誌CEL (Vol.134) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
人口減少や少子高齢化が進み、商店街のシャッター街化など地域活力の低下が懸念されるなか、新たな価値を生み出して都市の魅力を向上させることが求められている。
ニューヨークに代表される「パブリックスペース」の再編は、コロナによるパンデミックで一層加速したが、日本でも、さまざまな官民のパブリックスペースで社会実験が行われつつあり、まさに「ウォーカブルなまちづくり」の黎明期といえる。ウォーカブル政策を推進するきっかけとなった、国土交通省主催の懇談会では「世界における生産性の高い都市とは、歩きやすい都市である。いい環境こそがいい人を呼び、いい産業を生み出し、またそこに人がやってくる、という好循環が生まれる」とした。都市の魅力を活かしたウォーカブルなまちづくりには、公と民、個人と組織を超えた相互理解と主体的に関わる動機が必要であり、社会実験は、その関係性を生み出し、将来のイメージを共有するためにも必要なプロセスといえる。
今号では、さまざまな事例と視点から「ウォーカブル」の本質を考察した。御堂筋における官民連携で取り組む人中心でウォーカブルな空間への再編では、地域に関わる人々自身が、まちの将来像を考え、「シビックプライド」をもつことが重要だという。コンパクトシティ推進に大きな役割を果たした富山「グランドプラザ」の成功は、新たな領域に対し、役所と地域の人々がどう向き合ったかにある。それは、よい人間関係というだけでなく、まちづくりのプロセスの転換から自由な運営や具体的なアイディアが生まれたことが大きな要因であった。
ウチとソトを明確に分ける文化をもつ日本では、社会実験を通じて、パブリックスペースの新しい使い方にトライし、振る舞い方を学習することで、ウォーカブルなまちへとシフトチェンジしていく。官民連携で多様な領域のプレイヤーが、主体的に関わり、関係性を築いていけば、自然とまちはウォーカブルへと動き出し、そこを訪れる人が「よそ者」と感じることのない、インクルーシブな真の活力が生まれてくるのではないだろうか。