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情報誌CEL

畑中 章宏

2025年03月01日

写真家と大阪 第2回 宮本常一

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2025年03月01日

畑中 章宏

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情報誌CEL (Vol.136)

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日本の写真史にその名を刻んだ大阪の偉大な写真家たち。その写真家が写し出した作
品から、大阪の都市の様相を振り返る。第2回は宮本常一の《天満署と天満宮鳥居》。


写真を撮る民俗学者

宮本常一(1907〜1981)は日本の写真史に名前を刻まれているような写真家ではなく、綿密なフィールドワークにもとづいて多くの著作を残した民俗学者である。しかし彼には、『宮本常一 写真・日記集成』(全2巻・別巻1)という大部の出版物があり、その付録で荒木経惟、森山大道といった有名写真家がオマージュを捧げているように、たんなるスナップを超えた技術を持っていた。
宮本は実業家・渋沢敬三が自邸に開いた私設研究組織「アチック・ミューゼアム」の所員として活動していたことで知られるが、その自己形成は大阪時代に培われたものだった。山口県の瀬戸内海に浮かぶ周防大島で生まれた宮本は、15歳のとき桜宮にあった逓信講習所に通うため大阪で暮らし始める。その後、高麗橋郵便局に勤務しながら大阪府天王寺師範学校に通い、泉州のいくつかの尋常小学校で教鞭をとった。戦中・戦後は堺市鳳に住み、大阪府から委嘱されて、農作物の栽培指導に注力していたこともある。

宮本は郵便局勤めの時期、釣鐘町(当時は大阪市東区、現在は同中央区)の長屋で暮らして、大阪市中の散歩を趣味にしていた。
「ただ歩くことが好きであり、働いている人の姿や顔も見るのが好きであった。堂島川や土佐堀川に沿うて歩き、さらにそのさきの安治川を川口の天保山まで歩いたこともあった。」(『民俗学の旅』)
写真は1959年10月13日に、大阪市北区西天満一丁目付近、堂島川べりの天満警察署前に立つ天満宮鳥居を写した一枚である。宮本は堂島川に架かる「鉾流橋」の上からカメラを構えたはずだが、この川べりは、天神祭の宵宮に船を出し、神鉾を流して、御旅所を定めるための「鉾流神事」が行われる。
この写真を撮影したとき、宮本は大阪を離れていたが、昔馴染みの懐かしさとともに、警察署と鳥居、さまざまな文字情報の混在という写真的風景に惹かれて、思わずシャッターを切ったにちがいない。

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