中谷内 一也
2009年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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2009年07月01日 |
中谷内 一也 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.89) |
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私たちの生活には、健康や生命を脅かすさまざまなリスクが潜んでいる。それらを回避しながら長寿を享受するためには、生活者に何が求められるのだろうか。ここでは、リスクとうまくつきあっていくためのリスクリテラシーについて考えてみたい。
リテラシーとは、もともと読み書き能力を指す言葉であるが、今日では「メディアリテラシー=マスコミ情報を利用したり、内容を分析したりできる能力」、「リーガルリテラシー=法律についての知識や法律の活用能力」という具合に、特定領域での基本的素養を指すことが多い。したがって、リスクリテラシーとは、さしずめ、「リスク情報を活用し、生活の中でリスクの低い行為選択を行う能力」と言うことができるだろう。しかし、よくよく考えてみると、このリスクリテラシーを磨くことは容易ではない。どのような点で難しいのかを見ていこう。
情報活用能力について
リスクリテラシーを構成する第一の要素はリスク情報の活用能力、すなわち、必要な情報を収集し、それを読み解く能力である。生活者にとって最も重要なのは自分の命や健康であるから、人が何によって死んでいるのかについての情報が最も重要なリスク情報であろう。実は、わが国ではこれについてきわめて詳細な情報が用意されていて、誰にでも利用可能になっている。それは厚生労働省が毎年発表している人口動態調査である。どんな死因によって毎年何人の人が亡くなっているのか、その総数のみならず、10万人あたりの比率、男女別のデータ、年齢層別のデータ、地域別のデータ、さらに、それらの経年的推移など詳細な資料が提供されている。この人口動態調査に基づいて、日本での主な死因を示したのが次頁の表1である。国内では年間で110万人ほどの人が亡くなっているが、大ざっぱに見ると、死因の3割がガン、3割が心臓・脳血管疾患、1割が肺炎、それ以外が3割というところである。