田村 太郎
2009年07月01日作成年月日 |
執筆者名 |
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2009年07月01日 |
田村 太郎 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.89) |
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今回の雇用危機では、外国人労働者も深刻な影響を受けている。とくに1990年の入国管理法の改正により、来日と就労が緩和された日系2世・3世は、多くが人材会社を通しての製造業への派遣労働であったこともあり、経済状況の急変に対応できないまま混乱している。
「多文化共生センター大阪」(※1)では、09年1月より、日系ブラジル人に必要な雇用相談窓口や制度についての情報をポルトガル語で提供する携帯サイト「ブラジルネット」(※2)を開設して情報提供を行うとともに、日系ブラジル人が自分たちの現状や今感じていること、困っていることをメールで投稿できる窓口を設け、情報が少なく孤立しがちなブラジル人の不安を取り除くことを目的に活動を続けている。投稿メールには、「皆で手をつないで、たいへんな状況に向き合おう」という前向きなメッセージも寄せられる一方で、自分たちを使い捨てにする人材会社への不満や日本語ができなければ仕事が得られないことへの憤り、子どもの教育や住宅にかかる費用をどうすればいいのかという不安の声も寄せられている。
地域によって差はあるが、日系ブラジル人の失業率は3割を超えていると推測され(※3)、日系ブラジル人全体の深刻さは想像を絶するものである。これまでは人材派遣会社が住宅や子どもの教育までサポートしてきたため、多くのブラジル人は日本語を習得しなくても日本での生活に不自由することはなかったのだが、履歴書も書いたことがない外国人を雇用しようという事業所も少ない。現在、政府は支援策として無料の日本語教室を開催し始めているが、雇用の確保や状況の改善には、まだ直接つながっていない。年末年始は友人知人のうちの誰か職があるものの家に転がり込んで急場をしのいできたのだが、雇用状況が改善しない中、春以降は車上や路上生活に転ずるケースも増えている。セーフティネットが機能しているようには見えない。