沖 大幹
2009年01月08日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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媒体(Vol.) |
備考 |
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2009年01月08日 |
沖 大幹 |
エネルギー・環境 |
地球環境 |
情報誌CEL (Vol.87) |
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はじめに
2002年に南アフリカ共和国のヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議、いわゆるヨハネスブルグサミットでは、取り組むべき課題がアナン前国連事務総長らによってWEHAB、すなわち、water(水)、energy(エネルギー)、health(健康)、agriculture(農業)、biodiversity(生物多様性)の5つに整理された。このヨハネスブルグサミットでは、安全な水へのアクセスがない人口割合を2015年までに(1990年に比べて)半減するという国連ミレニアム開発目標に、改良された衛生施設(トイレ)へのアクセスがない人口割合も半減することが付け加えられている。さらに、2003年にフランスのエビアンで開催されたG8、主要国首脳会議では、水行動計画が採択され、2008年夏の「G8北海道洞爺湖サミット首脳宣言」には、そのフォローアップの必要性が盛り込まれている。
このように、国際政治レベルでは、水問題は従来から大きな課題であり、その解決へ向けた取り組みがさまざまに検討されてきている。これは、やはり水問題が、保健衛生・健康や食料生産、エネルギー生産や生態系保全、貧困と経済発展、さらには水汲み労働に費やされる機会費用を通じて教育やジェンダー問題にまでつながっているからであろう。
日本でも、つい数十年前、高度成長期には、産業の発展が水資源の不足によって阻害されるのではないか、と懸念されていたし、下水道普及率も1970年時点では20%にも満たなかった。しかし、その後、増加する人口と経済発展に伴う需要の増加、なかでも都市へ集中する需要の増大を支えるべく水資源開発が行われたため、現在の日本では水問題を意識する機会は少なくなり、社会の関心も低くなっている。那覇や福岡など、20世紀の終わりになっても慢性的な水不足で苦しんでいた都市にも大規模な海水淡水化施設が導入され、他の日本の多くの都市のように、水に関して悩まずにすむようになっている。では、日本は他国の水問題に無関心でも構わないのであろうか。