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情報誌CEL

畠山 重篤

2009年01月08日

森と海をつなぐキューピット、それは鉄

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2009年01月08日

畠山 重篤

エネルギー・環境

地球環境

情報誌CEL (Vol.87)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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はじめに

 漁民による広葉樹の森づくり、「森は海の恋人」運動を始めて二十年の歳月が経過した。

 ブナ・ミズナラ・コナラ・ウリハダカエデ・ガマズミ・マンサク・カツラなどの落葉広葉樹を約五万本植え、その地を「牡蠣の森」と命名した。

 当初、森と海をつなぐメカニズムは全く知らないままスタートしたが、近年、鉄分の存

在がキーワードであることが解明されてきた。知られざる鉄の科学に挑戦してみたい。

 

牡蠣の眼で森を視る

 牡蠣の漁場はどこでも、河川水が流入する汽水域(淡水と海水が混じる海域)に形成されている。日本一の産地である広島は、太田川が注ぐ大汽水域である。第二位は宮城で、北上川が流入している。

 三陸リアス式海岸の気仙沼湾には大川が注いでいる。

 リアス式海岸のリアスとはスペイン語で「潮入り川」を意味する。ギザギザの海岸は、元々は川が削った谷なのである。今から十万年前の氷河期は、海の水位が今より百五十メートルも退いていた。約一万年前、地球は暖かくなり、海の水位が上昇し、川が削った谷に海が浸入してきた。「縄文海進」と呼ばれる時代である。

 「リアス」の語源は、スペイン語の「リオ(川)」である。つまりリアス式海岸とは、森と川と海とが一つになった地形なのである。

 三陸海岸が、その中心だと思っていたら、スペインの西方、大西洋に面したガリシア地

方が本家本元だった。十年前に訪れてみたがヨーロッパを代表する養殖漁業が広がって

いた。

 牡蠣の餌は、植物プランクトンである。河川水が流入する海と流入しない海とでは、生物生産量は大きく変わる。東京湾と鹿児島湾の比較が解りやすい。両湾は、湾の面積がほ

ぼ同じである。

 「青い海の鹿児島湾と東京湾とでは、どちらの方が、お魚が捕れますか」と子どもたち

に問うと、ほとんどが「青い海の鹿児島湾」と答える。ところが汚れに汚れたと思ってい

る東京湾の方が、三十倍も漁獲量が多いのである。

 鹿児島湾は火山の爆発でできたので大きな川が流入していない。東京湾には、十六本

の川が注ぎ、二年で巨大な湾が真水になってしまうほどの水量である。

 東京湾の背景は武蔵野の雑木林である。つまり江戸前の魚介類は森と川の恵みだと捉えなければならないのだ。

 

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