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情報誌CEL

埼玉・鈴木邸

2009年01月08日

 雨水を溜めて使い、循環させる住まい

作成年月日

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媒体(Vol.)

備考

2009年01月08日

埼玉・鈴木邸

エネルギー・環境

地球環境

情報誌CEL (Vol.87)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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すぐそばに水のある住まいを実現

 近年「ゲリラ豪雨」と呼ばれるような、短時間に局所的に降る大雨もあり、都市部では、雨は時として厄介な存在となっている。東京都が莫大な費用をかけて巨大下水道を建設しているように、降った雨の水はすぐに集めて処理するべきものとして扱われがちでもある。しかし雨は本来、自然の恵みである。この考え方から、雨水を循環させ、水を楽しむ家と庭の実現を目指したのが、東京理科大学名誉教授の鈴木信宏さん設計による住宅(自邸)である。

 埼玉県朝霞市にある鈴木邸では、自宅の庭の下に8トンのタンクが埋め込まれている。家や庭に降った雨水の多くは、渦巻くろ過道を通り、タンクに溜められる。その雨水をポンプで循環させ、夏場なら屋根に設置されたスプリンクラーで撒くことで屋根の温度を下げるために利用し、庭への散水のほか、池や噴水などでも使う。また室内でも、洗濯機に使用するなどして、雨水は住宅内外のあらゆるところで活用されている。

 雨水を効率よく集めるための工夫もさまざま。屋根に降った雨は軒樋を使って2箇所に集められ、庭に落ちるようになっているのをはじめ、庭の一部には表土の下に防水シートを埋め込み、そこに降って地面に染み込んだ雨水も、やがてタンクに集められる仕組みになっている。

 鈴木さんは言う、「循環が大切ですね。この家では、タンクに溜める以外の雨水は少しずつ土に染み込み、一部は蒸発して自然に返っていきます。雨水は、一気に流すから洪水が起こるわけですが、ゆっくり流せば潤いを生みだすものなのです」。

 この家では、屋根から水を流す際にも、水が建物正面に設置された透明な板を伝わって落ちていくようになっている。「室内から、水の流れを眺めながら食事ができます。光が当たるときれいですよ」と鈴木さんが言うように、心安らぐ空間づくりのために、生活のすぐそばに水があるような配慮が各所になされている。

 こうした発想の原点は、鈴木さんが60年代にアメリカへ留学した際に見た、ニューヨークのペイリー・パークにあるという。

 「横12m、縦30mほどのポケットパークでしたが、そこにはニセアカシアが茂り、奥に幅12mで高さ6mほどの滝がありました。低い石段を上ると、滝のしぶきの中で、水に触れることもできる。市民は仕事の前やお祈りの帰りに立ち寄って自由に時を過ごしていました。都会ながら、人がくつろぐ『水空間』が実現しているのを見たのが、水を取り込んだ建築を目指すきっかけになったと思います」

 鈴木邸では、時に庭の樹木や野芝の上に人工的な雨を降らせたりする。「時々散水して、雨水を大地や空に返してやるのも大切だと思います。この家が庭木と共に地球の雨水循環の手伝いをしていると考えると楽しくなります」と鈴木さん。

 雨水を各戸に貯留し、利用して循環させる。鈴木さんの楽しそうな話をうかがっていると、そうした発想の転換が、これからの都市での暮らしにとっても大きな可能性を秘めているように思えてくる。

 

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