濱 惠介
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2009年01月08日 |
濱 惠介
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エネルギー・環境 |
地球環境 |
情報誌CEL (Vol.87) |
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命・生活を支える水
毎日の暮らしに水を利用することはあまりに当然で、住居を構えることができる大前提に「水が得られること」があるのも当然で、もはや意識にない。わが国では近代水道の極限に近い普及により、どこでも水道があるのが当たり前になった。
中国に「飲水思源」という格言がある。1972年日中国交正常化の際、先人達の功績に対し周恩来首相が引用して知られるようになった。「水を飲む時には井戸を掘った人を忘れない」という意味だ。今日、我々は水道を引いてくれた人に感謝しているだろうか。使用料を払っているから当然、と思ってはいないか。
昔風の井戸なら、つるべを操り、桶で汲み上げなければ水は得られないが、今日では蛇口を回せば、飲める水がいくらでも出てくる。その水がどこで取水され、どのようなプロセスを経て各家庭に届くのかはよく見えない。使った後の水の大半は下水管を流れて行くのだが、下水処理場がどこにあって、その下流がどこへ行くのか意識は乏しい。蛇口からわずか数十センチ下の排水口までの付き合いだ。
家庭で使われる水(生活用水)の用途の1人当たり1日の使用量は307リットルである(※1)。その用途別内訳の2例を図1に示す。大阪府データは風呂の比率が高く、絶対量は264リットル/人・日と全国平均より少ない。国際比較では、日本人の1人当たりの生活用水使用量は、北米とヨーロッパの2〜3か国に次いで多い。近年、1人当たり消費量は減少傾向にあり、節水型の洗濯機や節水便器の普及などによると見られる。
風呂が高い比率を占める理由は、日本人にとって当然の生活習慣にある。季節にもよるが、毎日浴槽に湯を溜め入浴する世帯は、75%から84%と大多数を占める(※2)。
風呂に関する節水行動には、残り湯の温め直しと他用途への利用がある。温めなおす世帯は4割程度と見られ(※3)、かなりの世帯が節水を心掛けている。また、残り湯を洗濯などによく利用する世帯は約42%、少しは利用する世帯を加えると約55%に達する(※2)。
飲み水は1日・1人当たり1・2リットルとわずかだが、その質的な関心は高い。浄水器の販売台数が年間400万を超えるほど、「きれいな飲み水」へのニーズは強い。上水に対する信頼が揺らいだというより、健康・安全志向の表れと見られる。最近は大型店舗が「純水」を条件付きで無料提供しているのを見かける(図2)