浅岡 美恵
2008年01月10日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2008年01月10日 |
浅岡 美恵 |
エネルギー・環境 |
地球環境 |
情報誌CEL (Vol.83) |
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ツバルに見る私たちの暮らしの近未来
ツバルは南太平洋に浮かぶ紐のような環礁からなる海抜一メートル、人口一万人ほどの小さな国である。水没の危機に直面している小島嶼国を象徴する国。今、この国の行方が注目されている。写真家の遠藤秀一氏が島の住民一人ひとりを写真に撮り、その生活を残そうとしている(※1)。写真家としての遠藤氏の腕も相まって、質素に暮らす島の大人たちは思慮深く、人としての尊厳にあふれ、子どもたちは生気にあふれた目を輝かせている。二千年を超えて安定した気候のもとで人々の暮らしが営まれ、気を活かした文化を築いてきた。今、それが崩れようとしている。
ツバルの海面は四〜五年間隔で跳ね上がるように、しかし確実に上昇しており、高波で沿岸域は浸食され、防波堤の役割も果たしてきた椰子の木は根こそぎ倒れている。地下のレンズ型の淡水層が押し上げられ、農作地や井戸水に塩害が生じ、水や食糧を輸入するようになった。図1はIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change :気候変動に関する政府間パネル)第三次報告書における排出削減と気温の上昇などの変化との関係を示す図である。今後、大幅に排出を削減し、温室効果ガスの大気中の濃度を安定させても、気温は現在よりも高くなる。気温を安定させることができても、海面水位は、今後、数百年にわたって上昇し続ける。ツバルでは、島が水没する前に、既に島での生活が成り立たなくなっており、ニュージーランドへの移住が始まっている。日本でも、美しい砂浜や天の橋立などは失われていくだろう。